2022/5/4

総合・マクロ

ガスプロム、ポーランドとブルガリアへの天然ガス供給停止

この記事の要約

●ガス代金のルーブル建て決済を拒否した国に対する初の報復●両国とも事態を乗り切れる見通しロシア国営天然ガス企業のガスプロムは4月26日、ポーランドとブルガリアの天然ガス輸入業者に対し、27日から供給を全面的に停止すると通 […]

●ガス代金のルーブル建て決済を拒否した国に対する初の報復

●両国とも事態を乗り切れる見通し

ロシア国営天然ガス企業のガスプロムは4月26日、ポーランドとブルガリアの天然ガス輸入業者に対し、27日から供給を全面的に停止すると通知した。天然ガス代金のルーブル建て決済を拒否した国に対する初の報復となる。エネルギーの安定確保をめぐり、欧州の緊張がさらに高まりそうだ。

ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、ポーランドは強力にウクライナを支援している。人道的分野はもちろん、軍事面でも積極的な姿勢で、先週には戦車の提供を発表したほか、ガスプロムを含むロシア富豪・企業50人・社に対する独自制裁を発動した。

政府は今回の供給ストップについて、備蓄が75%と高水準であることや、国として対ロシア依存からの脱却に務めてきたことから、事態を乗り切れるという見通しを示した。

ポーランドはバルト海沿岸で液化天然ガス(LPG)受け入れ基地を運営する。また、今年の10月にはバルティック・パイプが稼働し、ノルウェーからデンマークを経由してガスを調達できるようになる。

これまで年間需要の45%に当たる90億立方メートルをロシアから調達してきたが、そのための長期契約も年内に期限が切れることになっていた。

ブルガリアは歴史的にロシアと緊密な関係を築いてきた。しかし、昨年末にキリル・ペトコフ政権が発足して以来、その距離が広がっている。ロシアのウクライナ侵攻に際しては、対ロ制裁を支持する立場を明確にした。ガス代金のルーブル建て決済についても「契約に反しており、リスクが大きい」として拒否した。

ブルガリアはガス需要の90%以上をロシアからの供給に頼る。しかし、政府によれば、当面は一般世帯への供給に支障はない見通しだ。他の調達先を模索することになるが、これにおいては米国政府も協力する立場を示している。

プーチン大統領は3月末、「非友好国」に対して天然ガス代金をルーブル建てで支払うよう要求。応じない場合には供給を止めると言明していた。これまでにハンガリー以外の全ての国が要求を拒否したが、供給中止は今回が初めてとなる。

欧州連合(EU)はロシアに対する制裁を強化しており、ガスプロムを資産凍結処分に処する可能性がある。8月からはロシア産石炭の輸入を禁止する予定だ。加盟国の中には禁輸措置を石油・ガスにも広げるよう求める声があり、今後、エネルギー分野における制裁がさらに厳しくなりかねない。

ただ、資源をめぐるEU諸国の対ロシア依存は甚大で、ガスの供給停止が広まれば、経済への大きな痛手が避けられない。しかし、これは「両刃の刃」で、ロシア経済にも強烈な打撃を与えることになる。