●政府は40年までに6つの原子炉を建設し、石炭依存を減らす方針
●米企業は小型モジュール炉、仏EDFは欧州加圧水型炉の導入推進
ポーランド国営電力大手エネアはこのほど、小型モジュール炉(SMR)を開発する米ラストエナジーとSMRの導入事業で協力することで合意したと発表した。エネアは原子力事業に参入する同国企業としては3社目となる。合意によると、両社はSMRの開発、建設及び販売での協力に加え、ポーランドでの合弁設立も視野に入れる。調印式には両社の代表の他、政府のヤチェク・サシン副首相も出席した。
ラストエナジーのSMRは加圧水型で、発電出力20メガワット電気(MWe)、熱出力60メガワットサーマル(MWt)。モジュール方式の採用により他所で組み立て後に搬入できるため、投資決定から24カ月以内に導入可能なのが特長だ。原子炉の寿命は42年。両社は経済的・技術的な可能性を検証し、関連する認証を取得したうえで市場の状況に応じてさらなる協力を進めていく。
ポーランドは2050年のカーボンニュートラル(実質ゼロの排出量)達成を目指しており、同国企業は石炭利用を減らすため原子力の導入を進めている。化学大手シントスは米ゼネラル・エレクトリック(GE)と日立製作所の原子力合弁会社、GE日立ニュークリアエナジー(GEH)の「BWRX-300型炉」の導入を図るため、GEHと特定目的会社を設立するほか、石油大手PKNオルレンおよび化学品大手チェフ(Ciech)と協力して石炭火力を原子力に置き換えようとしている。シントスはまた、電力会社ZE PAKのピャトノウ発電所の石炭火力を原子力で代替可能か検討していく予定だ。
ほかにも米国のSMRメーカー、ニュースケールは燃料商社のウニモト(Unimot)及び米エネルギー企業ジェトカ(Getka)と協力し、石炭火力をSMRと入れ替えようとしている。同社はまた鉱山会社KGHMポルスカ・ミーズ及びエンジニアリング企業ピエラ・ビジネスエンジニアリングとの間でも同様のプロジェクトを進めている。
ポーランド政府は昨年9月、環境目標を達成するため2040年までに6つの原子炉を建設し、石炭への依存を減らす方針を明らかにした。その後、仏電力公社EDFが6つの大型EPR(欧州加圧水型炉)の建設に関するNBO(法的拘束力のない意向表明)を出していた。
EDFは建設会社ポリメックス・モストスタル、ボイラーメーカーのセファコ、ケーブル大手のテレフォニカ・ケーブル、冷却システムなどのユニサーブ、プラントエンジニアリングのZREカトヴィツェの5社と新たに協力協定を結び、EPR導入を推進する。その他、仏建設大手ブルージュ・トラバーユ・パブリックス及びポーランド同業ブディメックス、ポーランドのエネルギー関連企業の業界団体IGEOS及び仏原子力産業団体GIFENとの間でも提携が成立した。EDFは2021年12月にも、ポーランドのエンジニアリング会社ザルメン、ラファコ、ドミニョン、エギス・ポルスカ、EPGの5社と5つの協定を締結している。
ポーランド政府が掲げる2040年までのエネルギー政策は「移行」、「排出量ゼロ」、「清浄な大気」の3つを柱とする。同国は33年までに発電出力が1ギガワット電気(GWe)~1.6GWeの原子炉を1基導入した後、40年までに6Gwe~9GWeの原子炉をさらに5基建設する予定だ。最初の建設予定地としてバルト海沿岸のホツェボが候補に挙がっている。
米ウェスチングハウスは昨年7月、米国貿易開発庁(USTDA)の支援を得てポーランドでのAP1000型炉の導入事業開始を発表した。その他には韓国水力原子力がAPR1400型炉6基の建設で名乗りを挙げている。