ハンガリーのリゾートといえば西部にあるバラトン湖。しかし、外来種の貝がバカンス客のけがのもとになっている。現地で救急医療サービスを行っている赤十字の統計では、応急処置の理由のトップは毎年、貝による切り傷という。
原因となっているのは、カワホトトギス貝(ゼブラ貝)とクワッガ貝の2種で、いずれも外来種だ。形が鋭角で大きさは最大でも3センチと小さい。石や階段、ボート、大きな貝など、あらゆるところに数多く固着し、切り傷の原因となっている。
カワホトトギス貝は1932年にバラトン湖で初めて見つかった。黒海やカスピ海からドナウ川、シオー運河を経由して来た船舶にくっついてやってきたと推測される。30年代半ばに大量繁殖し、北岸の人気リゾート、ティハニの湖岸は2年以上、立ち入れない状態になった。当時の報道によると、「湖の底がカミソリの刃で覆われたよう」だったという。バラトン湖沼学研究所のチッラ・バログ氏は、「侵入直後は繁殖が盛んになることがある」と説明する。実際、その後は数がある程度、減った。
クワッガ貝は2008年に北米からオランダを経由してハンガリーにたどり着いた船舶のバラスト水に混ざってきたとみられる。バログ氏によると、クワッガ貝が現れると数年の間にカワホトトギス貝がいなくなることが多い。実際、栄養素の乏しい東岸ではカワホトトギス貝がほぼいなくなった。しかし、他の水域では両方が共存しているという。いずれにしても、在来の貝は絶滅の瀬戸際だ。
実際にバラトン湖でどれほどこれらの貝に遭遇するかはシーズンによって異なる。水深や水温といった環境的要因が繁殖・生育状況に関連しているからだ。いずれの貝も猛暑を好まないため、気候変動で大きく減少することもありうる。
一方、どこに「腰を下ろすか」については適応性が強い。護岸コンクリートなど固い場所が好みだが、いざとなれば泥底でも生きられる。化学物質を放出して仲間を呼び群生するため、湖水浴を楽しむ際はやはりマリンシューズを持参した方がいいようだ。