ロシア、国内自動車業界の振興に数兆ルーブル

●欧米の技術に頼らず、35年までに需要の8割を国産品で賄う目標

●競争力育成のため2.7兆ルーブルを研究開発用途に充てる

ロシアのプーチン大統領はこのほど、自動車産業振興に向けた長期プログラムの作成を政府に命じた。同プログラムは西側諸国の技術に対する依存度の引き下げを目的としたもので、2035年までに需要の80%を国内生産で賄うことを目標に掲げている。予算総額は数兆ルーブルに上る見通しだ。

プログラムの主な目的は、政府支援による国内生産と需要の刺激、自動車部品の国産化にある。貿易産業省は5,000億ルーブルから6,000億ルーブル(81億4,000万ユーロ~97億6,000万ユーロ)の予算を確保する予定だ。自動車輸出の振興のため同規模の支援を行う計画もある。政府は特に小型のディーゼルエンジンや自動変速機、アンチロックブレーキシステム(ABS)の国産化に注力する方針を掲げている。

また、自動車産業の競争力育成のため、政府は2兆7,000億ルーブル(439億3,000万ユーロ)を主に研究開発費に当てる予定だ。2021年までの6年間で0.2%から0.5%にとどまっていた自動車メーカーの研究開発費率を今後は3%~4%に引き上げる。貿易産業省は今後10年間、ほぼ外国の技術から遮断された中で開発を行う必要があるとの認識を示しているものの、開発リスクは大きく期間も長期化する見通しだ。

過去5年間、政府は国内の自動車メーカーとOEM企業に対し3,870億ルーブル(62億9,600万ユーロ)を支出してきたが、資金は主に自動車ローンやリースに対する利子補給に当てられた。

貿易産業省は外国企業が2000年代以降、組立工場を過剰に設置してきたとしており、外資の参入を規制する必要性があると指摘している。そのことが、部品メーカーや原材料メーカーが国内への投資を躊躇する要因の1つになっているとの主張だ。

今年の国内自動車販売台数は2000年代初め以降で最低となる80万台と予想されている。2021年の水準(販売台数175万台)まで回復するのは26年以降になる見通しだ。同プログラムでは35年時点の生産台数は190万台と想定されている。

ロシアの自動車生産はウクライナへの軍事侵攻以来、欧米の経済制裁などの影響により大きな打撃を受けている。今年5月の生産台数はわずか3,700台と前年同月に比べ96.7%減少した。同国に進出していた欧米の自動車メーカーは生産を中断した他、国産メーカーは輸入の途絶による部品不足にも悩まされている。(1RUB=2.36JPY)

上部へスクロール