先生が足りない~ポーランド

ポーランドで教員不足が深刻化している。全国で推定1万7,000人~2万人足りておらず、多くの学校で時間割が組めない状況という。

大きな原因は賃金の安さだ。初任給は月3,000ズロチ(630ユーロ)と法定最低賃金と同じ水準。20年前に最低賃金の1.65倍だったことを考えると低下が明らかだ。

18年間の教員生活を終えて「家庭教師業」に鞍替えしたアレクサンドラ・タトゥリンスカさんは、教員としては「高給取り」だったが、それでも手取りで4,000ズロチ(840ユーロ)にしかならなかった。スーパーのレジ係や工場の工員のほうが稼ぎが良い。

これに加えて、◇事務作業の煩雑化◇教員に対する社会の評価の低さ◇子どもの行儀の悪さ◇保護者の要求が不条理――といったことが働く意欲をそぐ。2019年の教員ストで、与党・法と正義(PiS)が組織的に教員に対する偏見をあおったことが判明したのも、辞職の増加につながった。

最近では、9月の新学期から社会科に代わって導入された新科目「歴史と現在」が論議を呼んでいる。これまでに存在する唯一の教科書は、リベラリズムやフェミニズムをナチズムと比べたり、欧州連合が無神論を広めようとしていると主張したり、同性愛差別、反ドイツ思想をあおる記述があるなど、PiSの道徳観でいっぱいだ。

タトゥリンスカさんは教員をやめたことで、これらのストレスと縁を切った。自営の家庭教師となったことで、1日の労働時間は12時間から8時間に減り、生活に困らない収入を得られるようになった。そして「ずっとやりたいと思っていた方法で子どもに教えられる」ことに幸せを感じている。

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