●地球のどの地点にもある固有の磁場の検出を位置特定につなげる
●屋内ナビの世界市場規模は30年までに550億ドルに達する予想
イスラエルのスタートアップ、オリエント(Oriient)が磁場を利用した屋内ナビゲーション技術を開発した。スーパーやショッピングモール、大型オフィス施設、病院などでの需要を見込んでいる。すでに米国のスーパー数百店舗で導入しており、英国、ドイツでも試験導入が進んでいるという。
オリエントは2016年にテルアビブで創業した。スーパーで買いたいものがすぐに見つからずにいらいらした経験から、屋内ナビの事業アイデアが生まれたという。ブルートゥース・ベースのインフラ構築がコスト面などで難しいことを確認した後、18年に地磁気を使うことを思いついた。地球のどの地点にも固有の磁場が存在する事実を利用して、その検出を位置の特定につなげる方法だ。
2019年に調達した資金で、誤差1メートル以内の位置情報システムの開発を実現した。デジタル地図プラットフォーム「マップスピープル(MapsPeople)」やグーグル・クラウド・マーケットプレイスを通じてソリューションを提供している。今年5月には1,100万ドルを追加調達した。
オリエントのソリューションをスーパーで利用すれば、目当ての商品を見つけたり、買い物リストに沿って店内をめぐったりできる。もっと詳しいことが知りたいときは、店員も呼べる。店舗側は、客の現在地に沿って割引クーポンや会員サービスの情報を送れる。また、客の店内での移動情報を匿名化して記録・分析し、販売戦略に役立てられる。
オリエントのオル・シン事業取締役は、米国食品小売業界だけでも年20億米ドルの屋内ナビ需要があるとみる。また、調査会社ガートナーは30年までに世界市場規模が550億ドルに達すると予想する。これには資産・利用者追跡、ロケーション分析、道案内サービスが含まれる。
イスラエルの屋内ナビ企業としては他に、WiFiとブルートゥースを用いるスペロ(Spero)や、医療機関や大学向けに地磁気ベースナビを開発するナヴィン(Nav-in)などがある。