イスラエルのナノテク研究者、化学療法の副作用低減技術を開発

●微細粒子が薬物を運ぶナノキャリアを利用し精密投与を行う

●従来方法で癌細胞に届く薬剤成分は1%未満だった

イスラエル科学技術研究所(Israeli Institute of Technology、テクニオン)はこのほど、ナノテクノロジーを活用して抗がん剤の副作用を大幅に減らす技術を開発したと発表した。抗がん剤を使用する際に従来は副作用が患者の全身に及ぶ可能性を考慮する必要があったが、同研究所は微細粒子が薬物を運ぶナノキャリアを利用した精密投与により、副作用の発生を局所的なものにとどめることに成功した。

同研究所が進めてきた研究はがん細胞の成長を抑制する阻害剤に焦点を当てたもので、強い副作用を持つため通常は使用できない抗がん剤についてナノキャリアを利用してマウスに投与したところ良好な結果が得られた。研究を進めてきたヨシ・シャマイ教授によると、精密投与により副作用の懸念がなくなることで、効果的な抗がん剤をより多く投与できるようになると述べた。

従来の経口投与や注射器による非経口投与では、薬の成分の多くが健康な細胞に行き渡る一方で、癌細胞に届くのは1%未満にすぎなかった。ナノ技術による精密投与で副作用を大きく減らすことができるとみられている。

シャマイ教授によると、ナノテクを利用した研究で今後5年以内に有効な特許を取得できる見通しだ。

イスラエルでは2009年にシモン・ペレス首相(当時)がナノテクの開発と応用研究の可能性に言及して以来、技術開発が大きく進められてきた。同国は近年、米国のシリコンバレーに次ぐナノテク関連スタートアップの集積地として注目されている。

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