ポーランド原発建設、米ウエスチングハウスが受注か

●国内2カ所に原子炉を3基ずつ設置する計画

●同国は米国の協力を得て中東欧の原子力産業の中心地を目指す

ポーランド政府が近日中に、同国初の原子力発電所の発注先を決定するもようだ。ヤツェク・サシン副首相兼国家資産相が訪問先の米国で23日明らかにしたもので、米ウエスチングハウスの受注が有力視されている。ポーランドはまた、新しいエネルギー源を柱としたエネルギー安全保障戦略の策定にあたり、米国の協力を得ながらポーランドを中東欧の原子力産業の中心地として発展させたい意向だ。

米国のジェニファー・グランホルム・エネルギー省長官は23日、サシン副首相およびアナ・モスクヴァ気候環境相と会談した後、ウエスチングハウスが原発建設を受注する可能性が「非常に大きい」と話した。モスクヴァ気候環境相は、ロシアとの関係悪化によるエネルギー危機へ対応するため、政府が年内に改めてエネルギー安全保障政策を決定する方針であることを明らかにした。具体的な方針の一つとして、新しい電源として原子力を導入するとともに、米国の協力を得ながらポーランドを原子力産業の訓練・開発拠点として育てたい意向だ。モスクヴァ気候環境相によると、米国側はこれに前向きな反応を示したという。

ポーランドは今年2月、2040年までのエネルギー政策を発表した。これによると、国内2カ所に原子炉を3基ずつ設置する。1号機に24年に着工し、33年に商業運用を開始する。その後、2~3年ごとに新原子炉を1基ずつ稼働させる。全6基の出力は6~9ギガワットを予定する。原子力の導入で、現在、電源の8割を占める石炭・褐炭発電を削減していく目標だ。初の原発の建設候補地としては、グダニスクの西に位置するルビアトヴォ、コパリノの名が挙がっている。

政府はまた、民間による中型・小型原子炉の設置で、最大15ギガワットの容量を確保できるとみている。この関連では、米ニュースケール・パワーが今年2月、精銅大手KGHMから小型モジュール炉(SMR)を受注し、29年までに納入する計画となっている。

ポーランド初の原発建設では、仏EDFと韓国水力原子力発電(KHNP)も受注を狙っていた。マテウシュ・モラヴィエツキ首相がエマヌエル・マクロン仏首相と会談した8月末の時点で「フランスは原発問題における最適なパートナー」と発言し、EDFへの発注に含みを持たせたこともあり、今回のサシン副首相の発表は、政府の姿勢が一貫しないという印象を与える。

このため、現地メディアでは、「欧州委員会が発注先の決定過程の不透明さを理由に原発建設を差し止めるのではないか」、「政府が原発2カ所の建設を、2つの異なる企業に発注するのではないか」といった憶測が報じられている。親欧州派として知られる『ジェチポスポリタ』紙だが、この件に関しては「欧州委が差し止めるようなことがあれば、ポーランドの主権の範囲を問う声があがるのは必至。ポーランドが改めて欧州委と対立する事態になった場合、欧州連合へのさらなる統合が国にとって悪い選択肢であるという印象を国民が受けかねない」と警告している。