トルコが国産EVの生産開始、エルドアン大統領の政治目的と批判も

●第1号モデルの予定価格は90万リラ(約4万9,000ユーロ)と高額

●25年までに国産化率を現行の51%から65%へ引き上げる

トルコ自動車合弁会社(TOGG)が10月29日、ブルサ工場で電動乗用車の生産を開始した。開発から国内で手がけた初のモデルで、外国への依存を軽減させる政治経済政策に沿うものだ。一方で、このプロジェクトの主目的が、エルドアン大統領の再選を支えることにあるとして批判する声もある。

TOGGは2018年、「電動国民車」の開発生産を目的に、国内企業・団体が共同で設立した。国外メーカーの影響を受けづらい自動車産業を育成する政府の方針に基づくもので、トルコ建国99周年に当たる29日にブルサ工場が正式稼働したことも、その政治的な位置づけを表している。

TOGGでは来年3月から顧客引渡しを開始する予定だが、これも、6月18日に控える大統領選挙をにらんだ日程とみられている。今回のプロジェクトが「大統領の肝いり」で進められ、成功すれば選挙がエルドアン大統領に有利になると考えられるためだ。

TOGGのプロジェクトを追ってきたジャーナリストのエムレ・エズペイニルジ氏は、TOGGの自動車をめぐる意見が極端に対立している事実を指摘。「政治的緊張がプロジェクトに害を及ぼすリスクがある」と警鐘を鳴らす。

一方、最初は「誰にも手が届く」自動車とうたわれていたTOGGのEVだが、第1号モデルのミドルクラスSUVの予定販売価格は90万リラ(約4万9,000ユーロ)。エズペイニルジ氏が「一般の消費者が払える」とする上限の「50万リラ」を大きく上回る。加えて、充電インフラも整備が遅れており、「首都アンカラと国内最大の都市イスタンブールを行き来するときでさえ、充電の心配をしなければならない」(自動車データサービス・調査会社、カーデータのヒュサメッティン・ヤルツン社長)状況だ。

価格が高いのは、バッテリーや駆動モーターなど部品・材料の49%が外国から調達されていることにも原因があるようだ。ヴァランク産業技術相は先ごろ、25年までに国産化率を現行の51%から65%へ引き上げる目標を明らかにした。エズペイニルジ氏は輸出の可能性に関連し、国外モデルと競合するには国産化率が70%に達する必要があるとみている。(1TRY=7.96JPY)

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