EUが第9弾の対ロ追加制裁で合意、ドローン用エンジン禁輸

●軍事利用される可能性のある物品の対ロ輸出も規制

●ウクライナに対し23年に180億ユーロの支援を行うことでも合意

欧州連合(EU)は16日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する第9弾の追加制裁を発表した。民間人へのミサイル攻撃に関与したロシア軍の将校や政治家など、新たに約200の個人と団体を制裁リストに加えるほか、ロシアが直接、またはイランなど第三国を通じてドローンを入手するのを阻止するため、ドローン用エンジンの輸出を禁止する。

加盟国は15日の首脳会議で欧州委員会がまとめた追加制裁案に合意し、16日に書面手続きを終えた。ミサイル攻撃や、ウクライナの子供たちのロシア領内への連れ去りに関与した軍関係者や政治家、軍事企業などが新たに制裁対象となり、EU内の資産凍結や、EUへの渡航禁止などの措置が取られる。

このほか主要化学物質や神経ガス、電子機器、IT部品など、軍事利用される可能性のある物品の対ロ輸出も規制する。また、プーチン政権を資金面で支える3つの銀行を新たに制裁の対象とし、資産凍結や取引停止で戦費調達を困難にする。さらにウクライナ侵攻を正当化するプロパガンダや偽情報を流しているとして、新たに4つのテレビ局の免許を停止する。

一方、西側諸国による制裁がロシアの肥料や農産物の輸出や輸送を妨げているとの批判を受け、制裁を一部緩和する。これまでも農産物の取引自体は制裁の対象となっていないが、アフリカなどを中心に食料不安が広がっていることから、小麦をはじめとする農産物や肥料の国際取引で重要な役目を担っていた特定の個人に対する資産凍結を解除する。

■ウクライナへ180億ユーロの支援

15日の首脳会議では、ウクライナに対して2023年に180億ユーロ(約2兆6,000億円)の財政支援を行うことでも合意した。ロシア軍の攻撃で破壊されたインフラ施設の修復や、公共サービスの維持などを支援する。

加盟国は12日の大使級会合でウクライナへの財政支援について合意していたが、同時に協議された国際的な最低法人税率の導入にポーランドが難色を示し、承認が遅れていた。なお、同じく12日に開かれた外相理事会では、加盟国は財政支援とは別に、ウクライナへの軍事支援に充てる基金を23年に20億ユーロ増額することでも合意している。ロシアの侵攻が長期化するのを見据え、財政・軍事の両面でウクライナへの支援を継続する。

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