一体型太陽光発電でEVの航続距離はどれだけ伸びる?

●夏期はフル充電時の航続距離よりも4~6.3%長く走れる

●伸長距離は固定型VIPVとトラッキング型VIPVとでそれぞれ計算

ウクライナ、ラトビア、スロバキアの研究者が共同で、電気自動車(EV)に車両一体型太陽光発電(VIPV)を配備することで航続距離をどれだけ伸ばせるかを試算した。結果によると、夏にはフル充電時の航続距離よりも4~6.3%長く走れ、コストは5~5.3年で回収できる。ただ、あくまでも理論的な計算の結果のため、研究者らは現実の条件下の結果とは異なる可能性を指摘している。

今回の試算で用いられた条件(仮定)は、◇2017年製フォルクスワーゲン(VW)「eゴルフ7」◇1,468×1,135ミリメートルのルーフに、中国の深セン普光太陽能(Shenzhen Puguang Solar Energy)製の120ワット(W)のソーラーパネルを2基、50Wを1基装備(最高出力257.92W)◇キエフを1月、4月、7月、10月のそれぞれ平均的な気候のなかで走行◇充電するのは駐車中のみ――などだ。新欧州ドライビングサイクル(NEDC)と米国環境保護庁(EPA)の走行モードで走らせた時の伸長距離を、固定型VIPVと、陽光の方向に応じて傾斜角が調整できるトラッキング型VIPVの場合でそれぞれ計算した。

固定型VIPVでは、7月には1,587ワット時(Wh)が得られ、最長航続距離はEPA方式で7.98キロメートル(3.99%)、NEDC方式で12.64キロメートル(6.32%)、それぞれ伸びた。1月は発電量が291Whとなり、EPA方式で1.55キロメートル(0.77%)、NEDC方式で2.32キロメートル(1.16%)伸長した。

トラッキング型VIPVの発電量は、7月こそ固定型と変わりがなかったが、1月、4月、10月では固定型を上回った。特に1月はEPA方式で3.01キロメートル(1.51%)、NEDC方式で4.52キロメートル(2.26%)、航続距離が伸びた。

トラッキング型の均等化発電原価(LCOE)がキロワット時当たり1.1013米ドル、固定型が0.6654ドル。コスト回収期間はそれぞれ5.07年と5.32年となる。

研究者らは、固定型に比べてトラッキング型の初期費用がずっと大きく、設置も難しいこと、両モデルのコスト回収期間に差がないことから、一般のEVドライバーでは固定型の需要の方が高いのではないかと推測している。

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