●高インフレや金利上昇、投資縮小、戦争による混乱など背景に
●ウクライナは戦争が激化しなければ、3.3%の成長に転換
世界銀行はこのほど、中東欧経済が今年、減速するという見通しを示した。高インフレや金利上昇、投資縮小、ウクライナ戦争による混乱などを背景に、世界的な成長鈍化が見込まれるためだ。
世銀によると、中欧(ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア)の経済成長率は昨年の4.5%(推定値)から今年は1.1%へ落ち込む。エネルギー危機や、融資条件の厳格化の影響が大きい。コロナ禍からの復興を目指す欧州連合(EU)投資基金「ネクスト・ジェネレーション」が動き出して改革が成功すれば、中期的に成長率が上昇する。
西バルカン諸国(アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア)は、昨年の3.1%(推定値)から2.5%へ減速する。EU加盟に向けた改革や投資が景気への圧力を緩和する。ただし、議会の運営膠着で改革が進まないリスクもある。
ウクライナを除く東欧(ベラルーシおよびモルドバ)は内需縮小が続き、今年も1.7%減のマイナスとなる。ウクライナは戦争が激化しなければ、3.3%の成長に転換する。いずれも、エネルギー供給に関連するリスクが大きい。また、天候不順で不作となれば、インフレ率が上昇し、食料安全保障問題が悪化する可能性もある。
南コーカサス(アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア)は今年の成長率が3.3%へと昨年のほぼ半分に落ち込む。20~21年の急成長の勢いが弱まるのに加え、ユーロ圏の景気減速、アルメニア・アゼルバイジャン間の緊張、重要な取引先であるロシアの経済縮小が足かせとなる。
中央アジア(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)は22年並みの3.9%を維持する。ロシアや中国など外需が弱い。キルギスとタジキスタンは従来値が上方修正されたが、両国間の国境紛争が見通しに影を落としている。