●利上げは新たな経済チームによる経済「正常化」に向けた動き
●エルドアン大統領の意向は依然として焦点に
トルコ中央銀行は22日の金融政策決定会合で、主要政策金利である7日物レポ金利を6.5ポイント引き上げ、15%とすることを決めた。利上げは2021年3月以来、27カ月ぶり。インフレ率が最高で80%を超える中、中銀は異例の緩和措置を続け、同年9月以来金利を合計で10.5ポイント引き下げていた。政権の新たな経済チームにより行われた今回の利上げは同国経済の「正常化」に向けた大きな転換点となる。
インフレ率は5月に39.59%となり、前月から4.09ポイント低下した。比較対象となる前年同月のインフレ率が73.5%と高水準だったことによるベース効果が大きい。低下は7カ月連続だが、中銀目標の5%からは大きくかけ離れている。
中銀は声明で、できるだけ早期のディスインフレ路線の確立と、インフレ期待の制御、物価の過度な上昇の防止のため「引き締めプロセスの開始」を決定したと説明。インフレの鈍化傾向を確実なものにし、インフレ状況が大幅に改善するまで引き締め政策を「適切かつ段階的に」強化する方針を示した。
■エルドアン大統領は利上げに理解、市場は小幅の上げ幅に失望
これまで「金利の敵」を自任し、利上げによってインフレの鈍化に成功した総裁を解任するなど公然と介入を繰り返してきた同国のエルドアン大統領は先月の大統領選での再選後、新たな財務相に元銀行家で経済学者のメフメット・シムセク氏を、中銀初の女性総裁として米金融大手出身のハフィゼ・ゲイ・エルカン氏を任命した。シムセク新財務相は、トルコが取り得る唯一の選択は「合理的な根拠と国際規範の遵守」に戻ることだと述べ、高インフレに利上げで対抗する「正統派」への回帰を表明している。同氏の方針に対しエルドアン大統領は、利上げに反対の姿勢に変わりはないとしつつ、インフレ抑制のため決定には従うと明言した。
一方、今回の利上げ幅が6.5ポイントとなったことに対し、20%以上への引き上げを予想していたアナリストからは失望の声が出ている。ブルーベイ・アセットマネジメントのティモシー・アッシュ氏は、「(利上げ幅は)十分ではなく、残念だ。中銀は利上げを前倒しする必要があった」と述べ、中銀の動きを批判した。利上げ幅が小幅にとどまったことが嫌気され、トルコリラの対米ドル相場は中銀の発表前の23.54ドルから24.1ドルまで下落し、過去最低を更新した。
専門家は今回の中銀の決定について、エルドアン大統領の顔色をうかがった結果だとみている。英危機管理コンサルティング会社ベリスク・メープルクロフトの中東・北アフリカ上級アナリストのハーミッシュ・キニア氏は、「新総裁はエルドアン大統領との衝突を避けるため慎重に行動しようとしている。前回最後に利上げを行った総裁は就任から5カ月足らずで解任されている」と述べた。