ポーランド総選挙、EU懐疑派の野党が勝利

ポーランドで25日行われた議会選挙(定数:460)は、野党で保守強硬派の「法と正義(PiS)」が過半数議席を確保する見通しで、8年ぶりの政権交代が確実な情勢となった。同党は欧州連合(EU)に懐疑的な立場で知られており、難民問題が深刻化する中、欧州諸国内の足並みを揃えるのが一層難しくなりそうだ。

地元テレビ局3社の推定によると、PiSは得票率38%で議席数を改選時の157から238へ伸ばし、過半数を占める見通しだ。単独政権が成立すれば、1989年の体制転換以来、初めてとなる。

与党・市民プラットフォーム(PO)は23%の得票にとどまり、前回選挙から18ポイントも減らした。議席数は207から135に減る予想だ。

他に、世界銀行の元エコノミスト、リシャルド・ペトゥル氏が率いる自由主義政党の「ノヴォチェスナ」が8%、ロック歌手パヴェウ・クキズ氏が率いる反体制派政党「クキズ2015」が9%獲得して議会入りする。

一方で左派政党は体制転換以来、初めて議席獲得が成らなかった。投票率は52%弱だった。

過去10年でほぼ50%の経済成長を遂げたポーランドだが、東部を中心に、成長の恩恵にあずかれない人々の不満が高まっていた。PiSの勝利は、政府への批判票を取り込むことに成功した結果だ。

PiSは選挙戦で(1)銀行資産税の導入(2)流通大手への課税導入(3)ユーロ早期導入を拒否(4)貧困層への福祉支出増加(5)カトリック的価値観の重視(6)ロシアに対する強硬姿勢の先鋭化――などを公約として掲げた。ヤロスワフ・カチンスキー党首は、独自路線を敷くことで知られるハンガリーのオルバン首相を高く評価しており、EU加盟国間の協調が難しくなりそうだ。

(5)に関連しては、イスラム教徒の移民・難民を受け入れれば、カトリックを基盤とするポーランドの文化が破壊されるとし、国民の不安をあおった。

(6)の関連では北大西洋条約機構(NATO)軍のポーランド常駐を強く求めるなど、シリア内戦をめぐってロシアとの一定の融和を模索するEUの外交に軋みが出る可能性もある。

上部へスクロール