ロシアIT大手のヤンデックスは22日、国内最大のネット銀行であるティンコフバン
ク(Tinkoffbank)を完全買収することで基本合意したと発表した。取引額は21日
株価を8%上回る54億8,000万米ドルで、現金と自社株で支払う。財務審査(デュー
ディリジェンス)と株主の承認を経て手続きを進める意向だ。テクノロジー、金融
の両市場では国営大手が存在感を増しているが、今回の買収が実現すれば、このト
レンドに反する民間企業の合併となる。また、市場では、ヤンデックスが元提携先
の国営ズベルバンクに対し、正面から挑む姿勢を明確にするものと受け取られてい
る。
ヤンデックスは地元市場で米グーグルより大きなシェアを握る、数少ないIT大手の
一つ。最近は、タクシーから電子商取引(EC)、エンターテイメントへ至る幅広い事
業で大きく前進してきた。
一方、ティンコフバンクはリテールに焦点を当てた事業運営と技術力に定評があ
る。ただ、最近はズベルバンクなど資金力のある競合の進出で思うように収益力が
伸びていない。創業者で筆頭株主のティンコフ氏は昨年、ヤンデックスのヴォロジ
CEO(最高経営責任者)に合併を提案していた。
ヤンデックスはEC事業やネット決済事業でズベルバンクと提携していたが、2018年
にズベルバンクによる過半数株買収オファーを拒否。これを機に、ズベルバンクが
他のテクノロジー企業と合弁でヤンデックスと競合する事業を立ち上げるようにな
り、今年6月の提携解消に至った。