ロシアとハンガリーの外相は8月24日、ブダペストで会談し、両国間の協力関係を
維持強化していく姿勢を確認した。ハンガリーの加盟する欧州連合(EU)がロシア
と一定の距離を置き続けるなかでも「理性的かつ実利に基づく関係」を継続して国
の利益を導き出そうという姿勢だ。具体的には、ハンガリーにおける新型コロナワ
クチン「スプートニクV」のライセンス生産や、ロシア産天然ガスの対ハンガリー
長期供給契約調印などが予定されている。
ハンガリーのシーヤールト外相は、「スプートニクV」の調達を例に挙げ、ロシア
との良好な関係が同国に大きな利益をもたらしたと話した。スプートニクの輸入
で、欧州でも早期に予防接種を進めることができたという立場だ。これに関連し、
デブレツェンでスプートニクをライセンス生産する交渉が進んでおり、来年にも出
荷が始まる見通しを明らかにした。
エネルギー安全保障では「ノルド・ストリーム2」の合意に触れ、「欧州の天然ガ
ス調達において、今後もロシアが重要な役割を果たしていくことが明らかになっ
た」とし、トルコを経由するパイプライン「トルコ・ストリーム」を通じたロシア
産ガスの受け入れ準備を進める自国の立場を擁護した。
天然ガス調達については、現行契約の期限が迫っていることから、新たに15年契約
を結ぶ方向で交渉が最終段階に入っていることを明らかにした。早ければ秋に、遅
くとも年末までに調印する見通しだ。
ウクライナ情勢についてはオルバン政権が「同国の独立性及び領土の一体性」を支
持していると確認したうえで、トランスカルパチア地方におけるハンガリー系住民
集団に対する差別行為を「受け入れがたい」と糾弾。ロシア系住民の保護を訴える
ラヴロフ外相と足並みをそろえた。
2010年にオルバン政権が誕生して以来、ハンガリーは欧州連合のなかでロシアの利
益を擁護してきた。ロシアによるクリミア半島編入を受けてEUが発動した経済制裁
の解除を繰り返し求めてきたほか、14年にはパクシュ原発拡張工事をロシアに発注
した。
ハンガリーとEUのあつれきが強まっていることを背景に、EUに対する立場を問う記
者団の質問に対し、シーヤールト外相は「ハンガリーはEU加盟国であり、今後もあ
り続ける」と強調。そのうえで、EUは「国民国家の集合体としてこそ、その力を発
揮する」と話し、独自路線を擁護する立場を改めて示した。