ロシアIT大手ヤンデックスは8月31日、米配車サービス大手ウーバーから合弁事業
の株式を10億米ドルで取得すると発表した。対象となるのはフードデリバリー「ヤ
ンデックス・イーツ」、食品配達「ヤンデックス・ラフカ」、急送便「ヤンデック
ス・デリバリー」および自動運転の4事業で、全額を現金で支払う。これらの事業
に対するヤンデックスの持ち株比率は100%に上昇する。
また、配車事業MLUでは株式4.5%を取得し、出資比率が71%に拡大する(うち3%
は従業員割当分)。年内に手続きが完了する見通しだ。ヤンデックスはさらに、今
回の取引で、ウーバーの持つMLU株29%について今後2年間、18億〜20億ドルで買収
できるオプション権を獲得した。
ヤンデックスは、新型コロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)でフード・食品デ
リバリーの需要が急激に拡大したのを追い風に売上が急増した。独自に展開するオ
ンライン通販やストリーミングサービスも伸びている。今回の合弁事業の完全子会
社化は、事業成長の加速を狙ったものとみられる。
ヤンデックス・イーツは2021年4-6月期の売上高を前年同期比93%増の81億ルーブ
ル(1億1,000万米ドル)に伸ばしたものの、営業損失(EBITDA)は200%増の30億
ルーブルに悪化した。配車・デリバリー事業全体では15億ルーブルの黒字を確保し
た。
ヤンデックスは、収集した情報を活用し、1つのサービスを利用した顧客に自社の
他のサービスの利用を促す中国式「エコシステム」の構築を狙っている。ヤンデッ
クスと、電子商取引(EC)大手のワイルドベリーズ、オゾンはいずれも今年、金融
サービス開始への足掛かりとして銀行を買収した。
一方、国内金融最大手のズベルは、ヤンデックスと競合するIT大手メール・ルと合
弁提携を結び、配車「シティモビール」、フードデリバリー「デリバリークラブ」
の両事業に巨額投資を実施した。ただ、昨年以来、両社の意見が合わず、関係は破
綻の危機に瀕している。(1RUB=1.50JPY)