東欧の欧州連合(EU)加盟国で新型コロナ患者が急増している。医療崩壊を防ぐた
め、各国政府は再び感染抑制策を導入しつつある。
ブルガリアでは19日の新規感染者数が4,979人と、4月1日以来で最も多くなった。
同国では成人の予防接種率(2回)が約25%と低く、新規感染者の80%強、死亡者
の約94%が未接種者だ。
政府はこれを受けて、21日0時から新たに規制措置を導入すると発表した。屋内活
動時にグリーンカード(免疫・陰性証明)の提示が義務化される(12歳未満は除
外)。同カードは、◇ワクチンを2回接種◇罹患して回復◇48時間以内の抗原検査
及び72時間以内のPCR検査で陰性——の場合に発行される。
具体的には、飲食店や宿泊施設、映画館、劇場、コンサート会場、美術館、ショッ
ピングセンター、運動施設、面積300平方メートル以上の小売店(食料品店は除
く)への入場・入店が想定されている。
ツアー旅行は参加者全員がグリーンカードを保持していなければ名所を訪れること
はできない。生徒・学生の社会見学なども同様だ。入院患者の面会は禁止。医療関
係者及び老人ホームの職員はすべて、勤務にグリーンカードが必要となる。
学校は、過去14日間に人口10万人当たりの感染者数が750人を超えた地域のみ、遠
隔授業を義務付ける。5年生から12年生の生徒は学校構内で常にマスクをしていな
ければならない。
大学の講義を対面でするか、オンラインでするかは各校の判断にゆだねる。ただ
し、対面の場合は出席者全員のグリーンカード保有が条件となる。
なお、政府はグリーンカードの不正交付を防ぐため、関係機関に対するガイドライ
ンを強化する方向だ。一方、受検者の費用負担を軽減するため、テスト資材は政府
が供給する。受検者はテスト機関に手数料だけ支払えばよくなる。
ブルガリアと同様に成人予防接種率(30%以下)が低いルーマニアでは、19日の新
規感染者数が1万8,863人、死者数が561人と、パンデミックが始まって以来で最悪
を記録した。人口当たりの死亡率も高い。
過去数週間の感染拡大で病院は患者であふれ、今週に入って集中治療室(ICU)の
患者数が過去最高に増加した。世界保健機関(WHO)と他のEU加盟国はルーマニア
政府の要請を受けて、人工呼吸器や酸素濃縮器、検査器材を提供している。
ルーマニアでも予防接種率が30%を切っており、ブルガリアと並んでワクチン接種
の普及が流行鎮静化のカギとなりそうだ。
一方、バルト3国でも新型コロナ患者が急増している。過去2週間の新規感染者数
(人口10万人当たり)はリトアニアで972人、ラトビアで864人、エストニアで859
人を記録した。
リトアニアでは予防接種率が70%に達しているのにも関わらず、新型コロナの重症
者が急増している。このため、今月に入って首都ビリニュスにある3大病院のうち2
軒で、急患以外の受け入れを停止した。
ラトビアでは病床使用率が80%を超える病院が出始め、医療崩壊が危惧されてい
る。政府は先週、3カ月間の緊急事態宣言を発令し、幅広い規制措置を導入した。
18日には追加措置として、21日から来月15日までロックダウン(都市封鎖)を実施
する方針を発表した。20時から5時までの外出や、食品・日用品店など必需品を扱
う店舗以外の小売店営業を禁止する。
エストニア政府も感染拡大を受けて対策を検討中だ。
スロバキアも患者が増加しており、政府が北部5県で対策措置を復活させた。