ロシア天然ガス大手で国営のガスプロムが、実業家アリシェル・ウスマノフ氏との
一連の取引を通じ、国内IT大手のVK(旧メール・ル)の経営権を握る。ロシア政府
によるIT業界への影響力強化に向けた施策と軌を一にするものだ。ソーシャルメ
ディア(SNS)事業への風当たりが厳しくなると予想される。
ウスマノフ氏の持ち株会社USMは、子会社メガフォンを通じて、VKの議決権57.3%
を保有するMFテクノロジーズの株式45%を、ガスプロムグループの保険会社ソガス
に売却する。また、ガスプロムバンクに直接、MFテクノロジーの株式9%を売却す
る。ガスプロムバンクは、先月ズベルから取得したMTテクノロジー株36%と合わせ
て、45%をガスプロムメディアへ譲渡する。
ソガスの株主にはガスプロムグループ(23.7%)のほか、プーチン大統領の友人・
側近が名を連ねており、事実上、政府がMFテクノロジーを通じてVKの経営権を握る
ことになる。
なお、MFテクノロジーのVK株式保有率(57.3%)は議決権ベースで、発行済株式
ベースでは4.8%のため、今回の取引がガスプロムにもたらす経済的な意味は小さ
い。
VKは「ロシアのフェイスブック」と呼ばれる人気SNS、フ・コンタクチェ
(VKontakte)を運営する。ロシア政府はロシア人ユーザーデータの国内保管義務
付けやコンテンツ監視などを通じてSNS大手への締め付けを強めており、専門家か
らは国内IT最大手ヤンデックスや米アルファベットのユーチューブといった独立系
企業への圧力が高まると懸念の声もあがっている。