ハンガリー首相が訪ロ、EUとの距離感をアピール

ハンガリーのオルバン首相は1日、モスクワを訪問し、プーチン大統領と会談し
た。ウクライナをめぐってロシアと欧州連合(EU)の間の緊張が高まる最中のこと
で、EUの方針に一定の距離を置く立場をアピールし、エネルギー調達などでハンガ
リーの利益を引き出す狙いとみられる。
会談後の共同記者会見でオルバン首相は、昨年9月に結んだ天然ガス長期調達契約
の枠内で供給量を現行の年45億立方メートルから55億立方メートルへ引き上げるこ
とを要請したと明らかにした。エネルギー価格が急進する中、将来的に調達価格の
安定を図る試みだ。プーチン大統領は前向きに検討する姿勢を示している。
一方、ウクライナ情勢についてオルバン首相は、ロシアに「ウクライナ問題を先鋭
化させる意図はない」という見方を示した。そのうえで、ウクライナの北大西洋条
約機構(NATO)加盟否定を含む「安全保障上の確約をプーチン大統領が求めるのは
自然のことで、交渉の下敷きとなるもの」と話した。
オルバン首相は対ロシア制裁についても反対の姿勢を貫いている。ロシアのウクラ
イナ侵攻をけん制するため、制裁案の法制化に米国が動くなか、「望むような効果
は上がらない」という意見を先ごろ明らかにした。2014年のクリミア併合を受けた
EUの対ロ制裁についても「ハンガリーにとっては害の方が大きい」と述べている。
オルバン首相はEU加盟国の首相でありながら、ロシアに理解を示す立場を示すこと
で自らの利益を引き出す戦略をとってきた。一方、ウクライナとの関係は同国がウ
クライナ語での授業の割合を高める法律を制定した17年以来、悪化したままだ。ハ
ンガリーはこれを機に、対ウクライナ関係におけるNATOの決定機関、NATO・ウクラ
イナ委員会の活動を阻み続けている。

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