ハンガリーで外資系小売業者が苦戦している。食品価格が急激に上昇する中、さま
ざまな金銭的負担を強いられているためだ。主要産業の「ハンガリー化」を目指す
オルバン政権の政策が背景にあるとみられ、すでに地元企業に事業を売却する動き
も出ている。
ハンガリーでは昨年12月、年商1,000億フォリント(2億5,000万ユーロ)を超える
小売業者に対し、賞味期限が切れる2日前に食品を慈善団体に寄付することが義務
付けられた。その後、砂糖、小麦粉、鶏むね肉など食品6種に対して上限価格が導
入された。これに対する公的補償はなく、全額を業者が負担している。さらに、緊
急事態立法として、小売大手に対する特別税率が2.7%から4.1%へ引き上げられ
た。最近では上限価格が卵とジャガイモにも適用されるようになった。
これらの措置の対象となっているのは、ドイツのアルディ、リドル、ペニー、仏
オーシャン、オーストリアのシュパー、英テスコなど、外資系ばかり。というの
も、CBA、COOP、レアールの地場系大手3社はフランチャイズ制を採用しており、
「売上高」が基準値を下回っているからだ。
匿名を条件でニュースサイト「ポリティコ.eu」の取材に応じたある外資系大手の
関係者は、現状が「特定の企業をハンガリーから追い出そうとしているのに他なら
ない」と話す。政府の措置に従えば「持続的に黒字を生み出すのは無理」だから
だ。
このため、業界では外資系のみに負担を強いる一連の政策が欧州連合(EU)の統一
市場の原理に反しているとして、欧州委員会に介入を求めているという。
オルバン首相は2010年の就任以来、金融、メディア、エネルギーといった主要産業
の外資比率を低下させる方針を取ってきた。撤退する企業を買収したのは首相に近
い人物や企業だ。小売業界でもオーシャンが現在、ハンガリー資本に事業を売却す
る手続きを進めている。(1HUF=0.35JPY)