ブルガリアもウクライナ産穀物の輸入禁止に参加、EUは事態打開に動く

ウクライナ産穀物の供給過剰で価格が下落し、中東欧諸国の農業セクターが打撃を
受けている問題を巡り、同国産穀物の輸送経由地となっている同地域5カ国の対応
が割れている。すでに同国産農産物の輸入禁止を実施しているハンガリーとスロバ
キアに続き、19日にブルガリアが暫定的な禁止措置の導入を発表した。一方、国境
検問所での管理を強化していたルーマニアは21日、禁止を実施しないことを表明。
欧州連合(EU)レベルでの解決を目指す意向を示した。また、いち早く輸入禁止を
実行したポーランドはウクライナ側との協議を受け、21日から自国経由での輸送を
再開している。
ウクライナ産穀物を巡っては昨年、同国に軍事侵攻したロシアが黒海の港や海上輸
送路を封鎖し輸出を妨害した。これに対しEUは国際市場への流通を促すため関税を
停止。大幅に価格の下がった農産物を鉄道など陸路で輸送しているが、物流上のボ
トルネックのため主に中欧諸国にとどまっており、該当国で価格暴落を引き起こし
ている。一部の地域では抗議行動に発展しており、治安部隊が同国産穀物の輸送列
車を警護する事態となっている。
EUは当初、禁止に動いた国々に対し、自国の農業セクターの保護を目的とした一方
的な輸入停止措置は容認できないと非難していた。しかしブルガリアの輸入禁止を
受け、20日にウクライナ産の小麦、トウモロコシ、ひまわりの種、菜種に対し緊急
の「予防措置」を講じると発表。事態の鎮静化に乗り出した。同措置は損害を受け
た現地の農家への補償と併せ、これらの穀物が他のEU加盟国または域外地域に輸出
される場合にのみ5カ国を通過することを許可するもの。ブルガリア、ハンガ
リー、ポーランド、スロバキアが一方的な輸入禁止を撤回することを条件に6月末
まで実施される。これに対し5カ国は、予防措置の対象リストに牛乳、家禽、蜂蜜
を加えるよう要請している。
ロシアと戦うウクライナの最も強力な「同盟国」であるポーランドが輸入禁止に踏
み切った背景には、今年秋に予定されている議会選挙がある。政権与党の「法と正
義(PiS)」にとっては支持基盤である農村地域の不満増加は選挙で不利に働く。
同国政府は15日の緊急閣議後、少なくとも7月初旬まではウクライナ産農産物の輸
入禁止を続けると発表。モラヴィエツキ首相はツイッターに「農家を助けず放置す
ることは絶対にしない」と投稿していた。

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