スロバキア総選挙、ロシア寄り左派政党が勝利

スロバキアで9月30日に議会総選挙(定数150)が実施され、左派ポピュリストのロ
ベルト・フィツォ元首相が率いる野党「方向・社会民主党」(スメル)が勝利し
た。同国統計局によると、開票率99.56%の時点で同党の得票率は22.9パーセン
ト。獲得議席は単独過半数には届かず、今後は連立政権の樹立を模索することにな
る。同党はロシア寄りでウクライナへの軍事支援の即時停止を公約に掲げており、
フィツォ氏が首相に返り咲いた場合、欧州連合(EU)のウクライナ支援は足並みが
乱れる恐れがある。
2位はリベラル政党の「進歩スロバキア」(PS)(得票率18%)、3位は中道左派の
「フラス(声)」(同15%)。どちらの党も親EU路線で、ウクライナへの軍事支援
継続を訴えている。このほかにリバタリアンから極右まで4党が議会入りを果たし
ており、連立政権の樹立は長期化が予想される。
PSは「寛容で開かれた国際的な社会」の実現を標榜し、環境政策や性的マイノリ
ティへの配慮などを主張している。スメルは同党の姿勢を「リベラル・ファシズ
ム」と断じ、代わりに安定と秩序、社会保障の充実を訴えた。
PSのミハイ・シメツカ党首(EU議会元副議長)は政権獲得に向けて他の親EU政党と
の協議を望んでいるとされる。一方、同じくリベラル派のズザナ・チャプトヴァ大
統領はすでに、選挙勝利者であるフィツォ氏に政権樹立を委嘱する姿勢を示してい
る。フィツォ氏の支持者らから殺害予告を受けたこともある同大統領は選挙結果を
受け、「選挙の勝者は国の発展に最大の責任を負う。フィツォ氏がスロバキア国民
の負託に応えることが重要だ」との声明を出した。
キングメーカーと目されるのがフラスだ。専門家は同党がスメルとPSの反目を利用
して最大限の利益を得ようと試みるとみている。
フィツォ氏は2018年、ジャーナリスト殺害事件を受け首相辞任に追い込まれた。自
身は「親ロシア」のレッテルを退けているが、ウクライナ戦争について「ウクライ
ナのナチスとファシストによって」始められたと公言。戦争を止める唯一の方法は
和平交渉だと主張するなど、国内の親ロ派層を意識した発言が目立つ。対ロ制裁に
ついても「スロバキアに害とならない」場合にのみ同意するとしている。
スメルは地方や高齢者層で支持が高い。コメニウス大学の政治学者、ジョゼフ・バ
トラ氏は同党の勝利について、「新型コロナの流行はポピュリストが台頭する土壌
を整えた。加えて戦争も寄与している。スロバキア社会は元来、親ロシア的だ。こ
れまで政府はウクライナへの強い支持を打ち出していたが、国民は同意していな
かった」と話す。