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2024/11/13

東欧経済ニュース速報

「レール・バルティカ、30年の開通必要」=EU担当者

欧州委員会で調整を担当するカトリーヌ・トロットマン氏は7日、ラトビア議会 で、バルト三国を結ぶ鉄道幹線「レール・バルティカ」を2030年までに開通しなけ ればならないという立場を明確にした。レール・バルティカ・プロジェクト調査委 員会の質問に答えたもので、費用が膨張し計画の履行が危ぶまれている状況のな か、欧州連合(EU)側の決意を示した形だ。 レール・バルティカは、バルト三国と欧州鉄道網を結ぶ幹線を敷設する取り組み。 旧ソ連時代の広軌鉄道が残るバルト三国に標準軌の新路線を設け、旅客の乗り換え や貨物の積み替えの手間を省く狙い。当初、経済効果が前面に押し出されていた が、ロシアのウクライナ全面侵攻後は北大西洋条約機構(NATO)による動員を想定 した輸送手段としての重要性も強く認識されている。 しかし、新型コロナの世界的流行や、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた物価の 上昇などで、プロジェクトの推定費用は2017年の60億ユーロから現在では240億 ユーロと4倍に膨れ上がっている。調査委員会は、プロジェクトの運営や資金調達 などについて、新しい状況下での政府の対応をただす目的で設置された。 トロットマン氏は開通日程を「30年まで」とする一方、これを主線に限定し、支線 など他の設備については、その後の整備もあるという考えだ。主線が開通すれば、 支線敷設に向けた資金調達もしやすくなるとみている。 ラトビア政府はこれまでに、◇主線を単線として敷設◇騒音対策の削減◇道路整備 計画の縮小——などを通じて、開通までの予算を10億ユーロ削減する策をまとめ た。カスパルス・ブリシュケンス運輸相によると、エストニアが来年、自国区間の 計画策定を完了するまでの間、ラトビア政府はリガーエストニア国境間の用地取得 作業を進め、資金が使えるようになったらすぐに着工する態勢だ。 政府は数週間以内にレール・バルティカの将来とラトビアの役割について決定を下 すことになっている。 エストニアでも、工費縮小に向けた見直しが進められている。検討対象には、◇全 長の半分以上を単線に◇鉄道交通管理システムと電気システムは当初予算をそれぞ れ20%、30%削減◇高架橋1本の建設中止◇各駅停車駅の規模縮小◇タリン空港 駅、パルヌ空港駅の縮小◇レール・バルティカ整備予算によるパルヌ空港貨物駅の 建設中止——などが含まれる。 エストニア議会予算特別委員会に対する気候省の7日付回答によると、30年までの 完工は可能だが、鉄道運行管理システムや電気設備を設置し、運行試験などを経て 実際に通常運行へ移行するのは31年になる可能性もある。 ヴラディミル・スヴェト社会基盤相(社民党)は、「予想される運行間隔を基に考 えれば、計画を縮小してもレール・バルティカの実現は可能」と話す。必要不可欠 なものとそうでないものを見極め、必要なものだけに集中すれば30年開通が実現す るという見方だ。