ロシア産天然ガスのウクライナ経由輸送が終了、モルドバが深刻な電力不足に

ウクライナが年初からロシア産天然ガスのパイプライン輸送をストップした。2019
年に結ばれたトランジット契約が切れたためだ。ヴォロディミル・ゼレンスキー大
統領は、天然ガス輸出がロシアの重要な定期収入源で、対ウクライナ戦争を財政的
に支える役目を果たしていることから、これを制限・中止することを目指してい
る。
欧州連合(EU)は、22年2月の開戦以来、天然ガス調達における対ロシア依存を弱
めることに努め、需要に占めるロシア産ガスの割合を15%まで引き下げた。スロバ
キアとハンガリーは未だにロシアへの依存から脱却していないが、加盟国内で融通
する体制が整っているため、絶体的に不足するリスクは小さい。
一方、EU未加盟でウクライナとルーマニアの間にあるモルドバでは影響が深刻だ。
ロシアのガスプロムはウクライナのトランジット輸送終了と同時に、「代金未払
い」を理由として同国への天然ガス供給を中止した。同国では親ロ派が実効支配す
る東部のトランスニストリアにある火力発電所が、ウクライナ経由で輸入するロシ
ア産天然ガスを燃料として発電し、全国需要の3分の2を供給してきた。これがス
トップしたことで、皮肉にも親ロシア地域で一般世帯への電力・暖房の供給が止ま
るなど、状況が最も深刻化している。昨年11月に再選された親EUのマヤ・サンドゥ
大統領はトランスニストリアに人道的支援を行う姿勢を示したが、トランスニスト
リアの行政機関がこれを拒否した。オルガ・ロシュカ大統領顧問は、「モルドバ政
府が寒さでトランスニストリアを屈服させるという物語」を作り上げるためとみ
る。
サンドゥ大統領は今回の供給中止について、今年実施される議会選挙をにらみ、ロ
シア政府が「エネルギーを用いて脅迫」することで国民の投票行動を操作し、モル
ドバのEU加盟への道を閉ざそうとしているものと考えている。これがトランスニス
トリアを直撃する結果となっているが、専門家らはロシアがモルドバに対する不安
定化戦略を実行に移すにあたり、トランスニストリアを犠牲にしたとみる。
モルドバ政府は、ガスプロムによる供給中止の予告を受けてすでに12月1日に非常
事態を宣言。公的機関の照明やエレベーターの使用を制限するなど、厳格な省エネ
措置を導入している。また、電力の不足分を隣国ルーマニアから調達する予定だ。
ただ、これにより電力料金が再び上昇し、国民の不満が高まる可能性がある。
ポーランド国際問題研究所(PISM)のアナリスト、ヤクブ・ピエンコフスキ氏は、
ウクライナ政府がロシア産ガスの輸送を禁じたタイミングをロシア政府が利用し
て、モルドバ国内に政治的・社会的問題を起こそうとしていると説明する。モルド
バでは過去3年で6回、電力料金が上がっており、生活を直撃しているためだ。同氏
は親EUではない政党が選挙に勝つ可能性が強いと予想する。

上部へスクロール