量子コンピュータを用いたサイバー攻撃に耐えるセキュリティ技術の開発を手がけ
るチェコの新興企業ヴルトラ(Wultra)は15日、300万ユーロを調達したと発表し
た。量子コンピュータによる暗号解析攻撃に対しても安全な認証技術の開発のほ
か、欧州・東南アジアへの進出に投じる。
同社の認証技術は、銀行やフィンテック企業を量子計算が可能なマルウエア(悪意
のあるソフトウエア)から守り、そのデジタルサービスを安全に提供できるように
するためのものだ。米国立標準技術研究所(NIST)の承認する耐量子暗号を活用
し、パスワードなしで機能する。欧州の決済規制「PSD3/PSR1」やデジタルID規制
「eIDAS 2.0」といった世界的な安全基準にも適合する。
ヴルトラの創業者であるペトル・ドヴォルジャーク最高経営責任者(CEO)は、量
子コンピュータが5年以内に、日々の金融決済で用いられている暗号技術を解析で
きるようになると予想する。このため、金融機関が自らのインフラを守るための行
動をいま、起こさなければならないと説く。
ヴルトラの事業はスマホ向け認証ソリューションが主力だが、認証用ハードウエア
「タリスマン」も市場投入済み。欧州決済規制「PSD3」に沿い、スマホ以外の認証
手段を導入しなければならない法人・金融機関を顧客に想定している。タリスマ
ン・シリーズの機器はすべて欧州連合(EU)内で製造し組み立てている。最終工程
はチェコで行っているという。
同社はオーストリアのライファイゼンバンク・インターナショナル(RBI)、エル
ステ・デジタル、ハンガリーのOTPバンクなどと取引がある。
今回の調達ラウンドでは、チェコのテンサー・ベンチャーズ、J&Tベンチャーズ、
RBI系のエレベーターベンチャーズがヴルトラに投資した。
ヴルトラ社ホームページ
https://www.wultra.com/