余白一滴

温暖な春の到来にもかかわらず、感染第3波の影響で窮屈な思いをしている人が多いのではなかろうか。そこで今回はフランクフルトのとっておきの憩いの場を紹介することにした(遠方にお住まいの方は出張の空き時間などに足を延ばしてみてください)。

市の南西にシュヴァンハイムという地区がある。マイン川と空港に挟まれた地域だ。中世から近世にかけてドイツ皇帝・国王の狩猟地だったうえ、20世紀前半に空港が建設されたことから、広大な森林が残っている。地図を見ると、住宅・商工業地域と化したマイン川北岸との違いは一目瞭然である。

公共交通機関を使って街中から行く場合は、市電12号線に乗り終着駅のラインラント・シュトラーセで降りればよい。進行方左側の森に入り200~300メートルほど歩くと草地が目に飛び込んでくる。広々とした空間に圧倒され、ストレスがスーッと抜けていくのではなかろうか。

シュヴァンハイマー・ヴィーゼン(Schwannheimer Wiesen)と呼ばれるこの草地、もともとは周辺と同じ森林だったが、戦争や税負担で財政的に困窮するたびに樹を伐採して販売することを繰り返していたため、広野と化した次第だ。草地内には、19世紀の作家ハインリヒ・ホフマンの作品にちなんだ「もじゃもじゃペーター(Struwwelpeter)」と呼ばれる愉快な樹や、フランクフルト市有森林(マイン川南の森林地区)内で唯一の天然の湖ローゼー(Rohsee)など見どころも多い。ローゼーはマイン川の旧河道であるため細長い。

草地の南の森に入ると緩やかな登り斜面となる。ケルスターバッハー・テラッセという河岸段丘である。

逆に北へと向かい歩行者・自転車専用の陸橋で国道B40号線を超えると自然保護地区のシュヴァンハイマー・デューネに至る。不毛の砂地であるがゆえに貴重な動植物相が見られる(木道のある区間は地面に降りることが禁止)。ここまで来た場合はさらに北進して渡し舟でヘキスト地区に入り、Sバーンか市電11号線で市中心部に戻るのが良いだろう。コロナ禍でなければ、灯台のようなヘキスト城を眺めながら旧市街のロカールでビールを飲むこともできるのだが…。

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