SPD、緑の党、FDPの政権樹立に向けた本交渉が始まった。個々の分野で交渉が難航することはあっても政権協定に漕ぎ着けるのはほぼ確実と目されるなか、どの党がどの大臣ポストを獲得するかが焦点となり始めている。
最大の注目を浴びるのは財務相の座だ。FDPのリントナー党首は選挙戦の最中から就任に強い意欲を表明してきた。これを緑の党がけん制。同党のハーベック共同党首はシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州で財務相を務めた自身の経歴を挙げるなどして、リントナー氏と争う構えを示している。
FDPと緑の党がともに財務相ポストに執着するのは、権限が大きいためだ。他の省で政策を策定しても予算の権限を握る財務相が首を縦に振らなければ実現しない。リントナー氏とハーベック氏は国の次期財務相となることで、政策運営を自党に有利に進めようとしている。
両氏のどちらが財務相に就任するかという問題はEUレベルの政治にも大きな違いをもたらす。加盟国の財政規律緩和にハーベック氏が前向きなのに対し、リントナー氏は緩和を明確に拒否しているためだ。ユーロ加盟国はドイツの財務相を巡るつば迫り合いを、固唾を飲んで見守っているはずである。
財務相のポストは1つしかないため、最終的にはどちらかが譲歩することになる。その場合、譲歩した側は政治の常として他の政策面で何らかの見返りを得ることになるだろう。