余白一滴

年明け早々、エネルギー価格が過去最高を更新した。ADACによると、軽油は全国平均で1リットル=1.584ユーロを記録。バイオ燃料10%混合のE10ガソリンは2ユーロを超えるスタンドが多い。電力料金も1kWh当たり平均35セント超となっており、価格比較サイトフェリボックスによると3人世帯の年負担額は約200ユーロ増える見通しだ。

原油や天然ガスの価格高騰が主な原因だが、炭素中立実現に向けて政策を加速するにはタイミングが悪い。有権者の反発を買い、支持率が大幅に落ちる恐れがあるためだ。温室効果ガスの排出削減そのものに反対する市民は少ないものの、生計が圧迫されるとなれば話は違ってくる。食品や燃料など生活必需品の全般的な値上がりは特に生活にゆとりのない低所得層にとって深刻である。

ドイツでは昨年、炭素税が導入された。税額は毎年、引き上げられることになっており、今年は昨年のCO2排出1トン当たり25ユーロから30ユーロに上昇した。ガソリン価格は1リットル当たり1.4セント、軽油は同1.5セント高まる計算だ。炭素税は暖房用の化石燃料にも課されている。

連銀(中銀)の予測によると、今年はインフレ率が昨年の3.2%(EU基準)から3.6%へと一段と高まる見通し。早いうちに対策を打たないと、市民の不満が高まる恐れがあることから、政府は住宅手当を受給する低所得者に今年、最低135ユーロの一時金を支給する方針だ。

最低限の生活を維持できなくなった人々の不満が爆発しやすいのは古今東西を問わない。燃料価格の高騰をきっかけに発生したカザフ騒乱のニュースを見ていてそう思った。

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