余白一滴

先週号に印刷機械大手ハイデルベルガーの記事を載せた。後で調べてみたら、同社の記事の掲載は2年ぶりであった。近年はドイツのメディアでも取り上げられることが少ない。デジタル化の進展で印刷需要が減り、業界が構造不況に陥った2000年代は業績の縮小再生産が続き、ニュースは経営再建や人員削減が主だった。この国のかつての優良企業は老兵が消えゆくように存在感が薄れている。

そうしたなかで電動車の家庭用充電器(ウォルボックス)の生産能力を倍増するというプレスリリースは久々に出会った同社の明るいニュースである。現時点で事業規模は微々たるものだが、EVとPHVの需要が急速に伸びていることから、将来に期待が持てる。

印刷機械とウォルボックス。全く関連のなさそうなこの両者を結びつけたのが、印刷機械で培った電力管理のノウハウだというのは面白い。

世界の企業は現在、デジタル化と環境という2つの大波に洗われている。例えば自動車エンジン用の部品を手がける企業にとっては、エンジン以外の新たな市場と事業分野の開拓が緊急の課題であろう。

言うは易しで簡単ではない。それでも、ダイヤの原石は社内のどこかに眠っているのではなかろうか。ハイデルベルガーのニュースを書いていてそう思った。

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