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2010/5/19

総合 - ドイツ経済ニュース

金融市場税導入で独与党が合意

この記事の要約

独与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)の3党は18日、金融市場取引に対する課税制度を欧州レベルで導入することを働きかけていくことで合意した。野党・社会民主党(SPD)は同税の導入方針を与 […]

独与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)の3党は18日、金融市場取引に対する課税制度を欧州レベルで導入することを働きかけていくことで合意した。野党・社会民主党(SPD)は同税の導入方針を与党が明確に打ち出さなければ、EU財務相の緊急会合で創設が取り決められた「欧州金融安定化メカニズム」に対し独議会で賛成票を投じないとしており、与党はこの要求に妥協した格好。ただ、与党が合意した「金融市場税(Finanzmarktsteuer)」の課税方式がSPDの要求に合致するかどうかは明確にされておらず、SPDは議決での態度を保留したままだ。

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欧州金融安定化メカニズムはギリシャ危機が飛び火して資金難に陥った国が出た場合に最大7,500億ユーロの緊急支援を行うもの。まずはEUが最大600億ユーロの支援を行い、それでも足りないときはユーロ加盟国と国際通貨基金(IMF)が加わり融資保証を行うことになっている。ユーロ加盟国の支援額は計4,400億ユーロで、ドイツは欧州中央銀行(ECB)への出資比率(約28%)に応じて1,230億ユーロを分担する。

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独政府は10日の閣議で同メカニズムへの参加法案を了承した。今後は連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)で審議される。法案は与党3党と野党・緑の党の賛成で成立する見通しだが、政府は重要法案であるため大政党SPDの支持も取り付けたい考え。

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SPDは個々の金融取引を対象に売上税を課す「金融取引税(Finanztransaktionssteuer)」の導入を与党が打ち出すことを、同メカニズムを支持する条件に挙げている。同税を実施することで、金融危機で生じたコストを危機の原因を作った金融業界に負担させる意向だ。

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金融取引への課税に関してはこのほか、同取引で銀行などが得た利益や銀行員の給与・ボーナスに税を課す「金融活動税(Finanzaktivitaetssteuer)」構想がある。後者は前者に比べ金融不安の原因となる投機を抑制する効果が低いとされ、SPDは批判的な立場を取っている。

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一方、少数与党のFDPはこれまで、金融取引税構想を強く批判してきた。今回の与党合意で課税制度の名称が金融市場税(Finanzmarktsteuer)となり、具体的に何を意味するのかが曖昧にされたのは、政治的な妥協点を探るためとみられる。

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与党3党は18日の会合で金融市場税のほか、◇取引の裏づけとなる株式などを確保せずに行われる空売り(ネイキッド・ショート・セリング)の禁止◇欧州独自の格付け機関の設置――方針でも合意した。

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