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2010/6/16

ゲシェフトフューラーの豆知識

少額横領の店員が逆転勝訴、解雇無効に=最高裁

この記事の要約

1.3ユーロの横領を理由に即時解雇された大手スーパーKaiser’s Tengelmannの店員が起こしていた裁判の第2審判決を本誌は2009年3月4日号で取り上げた。このときは解雇妥当の判決が下されたが、原 […]

1.3ユーロの横領を理由に即時解雇された大手スーパーKaiser’s Tengelmannの店員が起こしていた裁判の第2審判決を本誌は2009年3月4日号で取り上げた。このときは解雇妥当の判決が下されたが、原告の上告を受けて審理した最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が10日、逆転勝訴を言い渡したので、今回は続報の形でこれをお伝えする。

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原告は同スーパーに1977年4月から勤務するレジ店員バルバラ・エンメ(52)。彼女は2008年初頭、レジ管理室にあったデポジット容器返還レシート(デポジット容器を返還した顧客が受け取るレシート。これをレジで提示するとデポジット料金が返還される)を2枚持ち出して換金・横領したため、解雇された。2枚のレシートの価値はそれぞれ48セント、82セントと小さい。

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これについてバーバラE.は、デポジットレシートを換金したのは同僚から偽りの情報を伝えられたためだと主張。今回の事件は組合活動を積極的に行う自分を貶めるために雇用主と一部の社員が仕かけたワナだと訴えた。また、勤続年数の長さと年齢の高さを踏まえれば、解雇は行き過ぎだと批判した。

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これに対し第2審のベルリン州労働裁判所は、横領は被用者に対する雇用主の信頼という雇用関係の前提を打ち壊す行為であり、額の大小は関係ないとして解雇を正当と判断。同僚に濡れ衣を着せようとしたことも卑劣だと批判した。

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一方、連邦労裁は今回の判決(訴訟番号:2 AZR 541/09)で、重大な理由があれば雇用契約を即時解除できるとした民法典626条1項の規定に基づいて少額横領でも即時解雇が可能なケースがあることを踏まえつつも、解雇が正当なのは服務規程違反により労使の信頼関係が修復できないほど壊された場合に限られると指摘。そのうえで、原告は横領を行うまでの32年間、処分を受けたことが1度もなく大きな信頼を作り上げてきたと断定し、わずか1度の問題行為でこの信頼は壊れ得ないとの判断を示した。雇用主はまず警告処分を出して信頼関係再構築のチャンスを与えるべきであり、解雇は行き過ぎだとしている。

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この判決により、勤続年数が長く処分歴のない社員は少額横領を行っても解雇されないとの判例が確定したことになる。

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