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2010/6/23

ゲシェフトフューラーの豆知識

経済性を理由とする社用車貸与の取り消し規定は無効

この記事の要約

社員に社用車を貸与する企業はその条件を早急に点検したほうがよさそうだ。雇用問題の最高裁である連邦労働裁判所(BAG)が労働契約の就業規則に定められた社用車貸与の取り消し条項を無効とする判決(訴訟番号:9 AZR 113/ […]

社員に社用車を貸与する企業はその条件を早急に点検したほうがよさそうだ。雇用問題の最高裁である連邦労働裁判所(BAG)が労働契約の就業規則に定められた社用車貸与の取り消し条項を無効とする判決(訴訟番号:9 AZR 113/09)を下したためだ。

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裁判を起こしたのは国際的に活動する大手企業に勤務する女性社員A。同社はAに対し社用車を貸し与え私用で利用することも認めていた。

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貸与のルールとしては社用車の利用状況を毎年チェックし、「経済的に利用してない」場合は貸与を取り消すことが定められていた。また、貸与を受けた社員は年間の走行距離見通しを事前に申告することが義務づけられていた。

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同社がAの利用状況をチェックしたところ、業務目的の年間走行距離(見通し)を4万9,500キロと申告していたにもかかわらず、実際の走行距離は2万9,540キロにとどまっていた。同社はこれを受け、経済的利用ルールに違反しているとして貸与を取り消したところ、これを不服としたAにその撤回を求める訴訟を起こされ、貸与取り消しに伴う経済的な損失(月370ユーロ)の賠償支払いも請求された。

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この係争で連邦労裁が下した判断は、社用車を経済的に利用していない場合は貸与を取り消すとした同社の就業規則そのものが無効であるというものだった。裁判官はその理由を、この規定はあいまいであり、具体的に何を意味するのかを従業員は理解できないと説明した。

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同判決を受け、国際的な法律事務所クリフォード・チャンスのパートナーは『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、FTD)』の寄稿記事で、社用車貸与に限らず服務規程のなかに類似の規定がないかどうかをリストアップし、必要があれば改正するよう推奨した。被告企業の社用車ルールに関しては「事前に申告した走行距離見通しを50%以上、下回った場合は貸与を取り消す」といった文面に改める、あるいは貸与期間を設定することで問題が解決されるとの見方を示している。

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