ドイツ政府はデータ保護法の改正案を8月25日の閣議で了承した。従業員や求人応募者のプライバシー保護を強化することが法改正の狙いで、法案は10月にも議会に上程される見通しだ。経済界からは従業員の不正行為を防止・発見するのが難しくなるとの批判が出ている。
\ドイツでは最近、大手企業が隠しカメラによる従業員の監視や不要な血液検査を行っていたことが相次いで発覚し大きな社会問題となっている。政府はこうした事態を重く見てプライバシー保護の強化策を検討してきた。
\政府法案が施行されると、企業は従業員を採用する際、業務への適正を判断するうえで必要な情報しか質問できなくなる。また、健康診断についても例えばパイロットに視力検査を受けることや家具包装業務で応募した求職者に腰痛などの疾患がないことの証明を要求することはできるが、秘書の求職者にこうした診断を受けるよう求めることは違法となる。さらに、応募者の人となりを調べるためにインターネットで誰もが見ることができる情報を入手することは認められるものの、人事担当職員などがSNS(ソーシャルネットワーク)に「友人」として登録し、応募者のプライベート写真などをチェックすることは違法となる。
\職場に監視カメラをひそかに設置することは禁止され、設置する際はその事実を公表しなければならない。また、更衣室や仮眠室、トイレへの設置はいかなる事情があっても許されない。
\電話やインターネットの私的利用を禁止している企業では職員による利用時間を記録し、汚職などの疑いがある場合はその内容もチェックできる。ただし、チェックした際はその事実を本人に通告しなければならない。
\GPS(全地球測位システム)を利用した営業職員の監視は◇従業員の安全を確保する◇どの職員をどこに向かわせるかを決める――のに必要な場合などに制限される。このため例えば「社員がどこで昼食を食べているかをチェックする」(デメジエール内相)ことは違法となる。
\同法案に対し、独雇用者連合会(BDA)のディーター・フント会長は、従業員の不正・犯罪を促進する恐れがあると批判。具体的には◇贈収賄や横領にからんでプライバシーに踏み込んだ調査を行うには具体的な容疑が必要で、単に疑わしい形跡があったり同僚による通報があるだけでは認められない◇具体的な容疑のある社員であっても隠しカメラで撮影できない――点を問題視している。小売業界団体も店員による万引き防止には隠しカメラが必要だとして、法案修正を求めている。
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