欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2010/9/1

経済産業情報

「EU特許裁判所の創設は違法」=欧州裁法務官

この記事の要約

欧州連合(EU)の共通特許制度をめぐり、欧州司法裁判所(ECJ)の法務官はこのほど、EU特許の創設に合わせて特許関連の紛争処理にあたる「EU特許裁判所」を設置するというEUの計画は「EU法と相容れない」との見解を示した。 […]

欧州連合(EU)の共通特許制度をめぐり、欧州司法裁判所(ECJ)の法務官はこのほど、EU特許の創設に合わせて特許関連の紛争処理にあたる「EU特許裁判所」を設置するというEUの計画は「EU法と相容れない」との見解を示した。インターネット上に流出した法務官の意見書で明らかになったもので、英・仏・独語のうち1つの言語だけで出願できる仕組みについても「構成国の公用語をすべてEUの公用語として扱う原則に反する」として問題視している。

\

EU加盟国の産業相理事会は昨年12月、域内の特許制度を一元化することで合意し、すべての加盟国で同じ効力を持つ「EU特許」を創設するとともに、特許関連の紛争処理にあたるEU特許裁判所を設置することを決めた。特許に関連するコストや手間を軽減することで研究開発投資やイノベーションを推進し、国際的な競争力を高める狙いがある。EUの欧州委員会はまた、EU特許では英語・仏語・独語のうち1つの言語だけで出願できる仕組みを提唱している。

\

これに対しスペイン、イタリア、ルクセンブルクなど数カ国は産業相理事会合意に先立つ09年6月、EU特許裁判所の設置がEU法に照らして適法であるかの調査をECJの法務官に依頼していた。

\

ECJの法務官は、EUの機関として特許関連の紛争処理を担当する裁判所を設置すること自体は可能としながらも、現行案ではEU特許裁判所がEUから独立した機関として位置づけられていると指摘。EU法が他の全ての法に優先することを保証する基盤が十分に用意されていないとの見解を示した。

\

法務官の見解に法的拘束力はないが、ECJではこれに沿った判決を下すのが通例のため、EUは計画見直し・修正を迫られる可能性が高い。ECJの広報担当者によると、最終的な判断は年内に下される見通し。

\