主要27カ国の銀行監督当局で構成されるバーゼル銀行監督委員会は12日、新しい自己資本規制(バーゼル3)案で合意した。ドイツは自国の特殊事情を新規制にある程度、反映させることに成功。協議に参加した独連邦銀行(中央銀行)のアクセル・ヴェーバーは満足の意を表明した。ただ、一部の州立銀行については特殊性があまり考慮されておらず、新規制の適用は存続の危機につながる可能性もある。
\バーゼル3は投機活動に起因する金融危機のしわ寄せを公的支援の形で国と納税者が負担した反省を踏まえ検討が始まった。このため、銀行の経営が悪化しても公的支援を余儀なくされることがないようにするのが最大の狙いで、銀行は財務基盤の強化を義務づけられる。
\今回の合意では自己資本のなかで最も良質な「狭義の中核的自己資本」を株式と内部保留の2つで構成し、融資などのリスク資産に対するその比率(狭義の中核的自己資本比率)を最終的に最低4.5%、実質7%以上とすることが取りまとめられた。7%の内訳は最低基準4.5%と損失の影響を緩和するための上乗せ分2.5%で、同比率が7%を下回った銀行は配当や報酬が制限される。
\このほか各国は景気の過熱を予防するため、独自の判断で最大2.5%の上乗せを追加できる。
\新しい狭義の中核的自己資本比率は2013年から導入がスタート。当初は3.5%と低く設定し、2019年までに7%へと段階的に引き上げていく(表を参照)。7%を達成するまでの期限を長く取ることで銀行が貸し渋りに走り実体経済に悪影響をもたらすことを避ける狙いだ。ドイツの政財界では肯定的な反応が多く、ショイブレ財務相は経済活動に支障は出ないと見方を示した。
\ \公的金融セクターは再編も
\ \バーゼル3の交渉でドイツが強く要求したのは「匿名出資(stille Einlage)」の取り扱いだ。これは出資の事実を公表する義務がないタイプの出資で、出資者は株主と異なり経営に口をはさむ権利を持たない。主に貯蓄銀行・州立銀行などの公的金融機関と信用組合で利用されており、自己資本不足に陥った民間大手のコメルツ銀行も昨年、匿名出資の形で国から164億ユーロの資本注入を受けた。
\匿名出資はこれまで、狭義の中核的自己資本として認められてきた。だが、バーゼル3の協議ではこれを認めない方向で議論が進んだためドイツは強く抵抗。一定の条件や制限を前提に匿名出資を引き続き狭義の中核自己資本として認めさせることに成功した。
\ただ、株式会社の形態を取る州立銀行に関しては2013年からこうした取り扱いが認めらない。
\公的支援を受ける条件として欧州連合(EU)の欧州委員会から株式会社化することを命じられたバーデン・ヴュルテンベルク州立銀行はそうした銀行の1つだ。同行は現在、45億7,000万ユーロもの匿名出資を受けている。これを2013年までに新定義の狭義の中核的自己資本に転換するのは容易でなく、最終的に州政府・納税者の負担が増える可能性も指摘されている。
\州立銀行の多くは金融危機で財務基盤が大きく悪化しており、バーゼル3の導入は公的金融セクターの再編につながる可能性が高い。これはドイツ政府の意向にも沿っている。
\一方、民間銀行はバーゼル3で課されるハードルを達成可能なものとして好意的に受け止めており、最大手のドイツ銀行は13日、自己資本の増強に向け増資を行うと発表した。コメルツ銀行も数十億ユーロ規模の増資に踏み切るとみられている。
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