スイス連邦材料試験研究所(EMPA)の研究チームはこのほど、電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池(以下:電池)が環境に与える負荷の試算結果を発表し、電池自体の環境負荷はライフサイクル全体で15%と比較的小さいことを明らかにした。負荷が最も大きいのは充電に使う電源(原子力、石炭、再生可能エネルギーなど)で、欧州の標準的なエネルギーミックスで充電した場合、走行100km当たりガソリンを3~4リッター消費する自動車に相当するという。
\EMPAの研究チームは今回の調査で、市場で最も普及しているタイプのEV向けリチウムイオン電池を対象に、「Eco-indicator 99」と呼ばれる環境影響の評価法を用いて環境負荷を算出。試算のベースとしてチューリヒ工科大などが管理・運営するライフサイクル評価(LCA)データベース「ecoinvent」の数値を参照した。
\その結果、電池の製造・維持・廃棄にかかる環境負荷は全体の15%以下で、チームが当初予測していたよりも低かった。内訳は電極に使われる銅、アルミニウムの産出によるものが7.5%、リチウム産出によるものが2.3%だった。
\一方、EVの定期的な充電では大きな環境負荷が生じる。15万キロ走行後の環境負荷は、標準的なエネルギーミックスで充電した場合で全体の約45%を占め、電源を全て石炭発電でまかなうとさらに13ポイント上昇する。一方、全て水力発電でまかなうと40ポイント軽減し、環境負荷を大幅に低減できる。
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