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2010/10/6

経済産業情報

ハンブルク産ワイン、2010年は「永久欠番」に

この記事の要約

ハンブルク産のワインと聞いてピンと来る人は相当なワイン通か地元の市民に限られるのではなかろうか。同市はモーゼル、ラインガウなど計13あるドイツの産地には入っていない。13産地の北限は北緯51度のザクセンであり、それよりも […]

ハンブルク産のワインと聞いてピンと来る人は相当なワイン通か地元の市民に限られるのではなかろうか。同市はモーゼル、ラインガウなど計13あるドイツの産地には入っていない。13産地の北限は北緯51度のザクセンであり、それよりもはるかに北のハンブルク(北緯53度)でそもそもワインなど栽培できるものなのか、、、?

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そうした疑問を抱くのは自然である。だがそれは、思い込みの産物と言っていいだろう。13産地というのは実はワイン法で指定されたちょっと格の高い産地であり、それ以外の地域で栽培することは法的にも技術的にも問題はないのだ。この意味でドイツ最北の栽培地は現在、北海に浮かぶジルト島である。2009年に地元シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州農業省から栽培許可が下りており、順調にいけば2012年から収穫が始まる。

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ハンブルクではエルベ川右岸のシュティンファングの丘で1995年に栽培が始まった。植えられているぶどうの木は100本と少なく、生産量も年40~50本程度に過ぎない。裏返せば希少価値の極めて高いワインなのだが、これを購入しようとハンブルク中のワイン店をくまなく訪ねても徒労に終わる。

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それもそのはずで、このワインは何とハンブルク市議会が栽培し市議会議長が管理しており、市販は一切していないのである。市議会議長は賓客など特別な人にしかプレゼントしないため、一般人は絶対に入手できない。

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このワイン、今年は9月29日に収穫が予定されていた。だがその前日の夕方、関係者の間に衝撃が走った。ぶどうの実のおよそ9割が何者かによって盗みとられていることが分かったのである。夜の暗闇を利用して盗み取ったというのが関係者の見方だ。犯人は収穫後に盗みだすのが難しいと判断し、畑に実がなっている段階で奪い取ることを思いついたのかもしれない。

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ぶどうの実をほとんど取られてしまったため、今年はワイン造りが取り止めとなった。畑に残された実はホームレス支援組織に寄付したとのことだ。

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被害を受けた市議会は今回の事件を刑事告発しなかった。このため警察当局は捜査を行っていない。ルッツ・モーハウプト議長は事件を、議会が作成する子供向けの音声ドラマ「アルスター探偵団」(日本の「少年探偵団」のような作品)の新作として物語化することを考えているという。

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