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2010/10/13

ゲシェフトフューラーの豆知識

賃金協定離脱企業、協定賃金の拘束力はどこまで?

この記事の要約

労使協定に拘束されることを嫌って賃金協定から離脱する企業(OT企業。OTはOhne Tarifbindungの略)は少なくない。そうした企業は離脱時点で有効だった業界の賃金協定には縛られるものの、これに代わる新協定が発効 […]

労使協定に拘束されることを嫌って賃金協定から離脱する企業(OT企業。OTはOhne Tarifbindungの略)は少なくない。そうした企業は離脱時点で有効だった業界の賃金協定には縛られるものの、これに代わる新協定が発効すれば拘束を受けることが全くなくなる。これは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2009年に下した判決(訴訟番号:4 AZR 230/08)ですでに判例が確定している。

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では、労働組合に非加入の従業員に対し業界の賃金協定に従って給与を支給することを労働契約で取り決めていた企業がOT企業となった場合、企業は労組の非組合員に対しても業界の新しい賃金協定に従った給与を支給する義務がなくなるのだろうか。今回はこの問題に関する係争をお伝えする。

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裁判を起こしたのはメーカーで品質管理業務に携わる男性社員で、労働組合には加入していなかった。一方、同社員が入社した1976年当時、被告企業は業界の雇用者団体に本会員として加盟し、金属労組のIGメタルと雇用者団体が締結した賃金協定を、労組の非組合員にも適用してきた。従業員間に不平等が発生しないよう配慮したためで、非組合系の社員の労働契約にはその旨が記されていた。

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被告企業は2004年になってOT会員となった。このため、その後に業界の労使が締結した賃金協定を自社の労組組合員と非組合員の双方に適用しなかった。原告社員はこれを労働契約違反と批判し引き続き業界協定を適用するよう要求、提訴した。

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これに対し第1審のゾーリンゲン労働裁判所は原告の訴えを棄却。第2審のデュッセルドルフ州労働裁判所も同様の判決(訴訟番号:17 Sa 317/10)を下した。

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判決理由でデュッセルドルフ州労裁の裁判官は賃金協定を離脱した企業には離脱後に締結された労使協定が適用されないとするBAG判決を指摘。労組が締結した賃金協定を労組の非組合員にも適用するとした労使契約の条項は社員を平等に待遇するという目的で盛り込まれたものであり、原告の訴えには妥当性がないとの判断を示した。また、非組合員の給与を業界協定に従って仮に引き上げたとすれば、業界協定の適用を受けられない組合員は不利益を被るとも指摘した。

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