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2010/10/20

総合 - ドイツ経済ニュース

2010年成長率3.5%に大幅引き上げ

この記事の要約

ドイツ内外の有力経済研究所は14日、連邦政府に提出した『2010年秋季合同経済予測』のなかで今年の国内総生産(GDP)成長率を4月に提示した実質1.5%から3.5%へと大幅に上方修正した。景気の支柱が当初の外需から内需に […]

ドイツ内外の有力経済研究所は14日、連邦政府に提出した『2010年秋季合同経済予測』のなかで今年の国内総生産(GDP)成長率を4月に提示した実質1.5%から3.5%へと大幅に上方修正した。景気の支柱が当初の外需から内需にも拡大し第2四半期の成長率が前期比で実質2.2%に達したことなどを反映させた格好。下半期以降は景気の減速が予想されるものの、来年についても成長率を4月予測の1.4%から2.0%に引き上げた。ブリューデルレ経済相は「巨大(XL)サイズの景気回復は続く」と明るい見通しに喜びを表明した。

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2009年のGDPは金融・経済危機の直撃を受けて前年を実質4.7%下回り、戦後最悪の落ち込みとなった。経済のけん引車である輸出産業が世界経済の大幅悪化の直撃を受けたことが響いた。ただ、同年第2四半期以降は各国の景気対策の効果で外需が好転。輸出主導の景気回復が続いてきた。

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今年第2四半期には外需に代わり内需が景気の最大の押し上げ要因に浮上。GDP成長率2.2%に対する内需の寄与度は1.3ポイントと、外需の同0.8ポイントを大きくしのいだ。輸出の好調を受けて企業が投資活動を活発化させたことが大きい。

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ここにきて世界経済の減速感が強まっているため、今後は第2四半期のような急成長が見込めないものの、好景気は続くとの見方が支配的だ。企業景況感や消費者景況感などが高い水準を保っているためで、秋季予測もそうした実情を踏まえている。

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ただ、経済のけん引車については個人消費が外需と企業投資に取って代わるとみている。背景には労働市場の回復が続くほか、一般世帯の収入が増えると予想されていることがある。秋季予測によると、2011年には失業者数が1992年以来19年ぶりに300万人を下回り、家庭の可処分所得も名目2.8%増、実質1.4%増となる見通しだ。

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「財政再建は堅持を」

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景気対策の影響で財政赤字の対GDP比率は今年3.8%へと膨らみ、ユーロ加盟国に義務づけられた3%の上限枠を2年連続で突破する。ただ、景気が予想外のスピードで回復しているほか、2011年からは政府が財政再建を再開させるため、同年の財政赤字比率は2.7%まで低下。3%の上限規定を政府予測よりも2年早く遵守できる見通しだ。

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ドイツが財政再建を来年再開することについては、景気回復の腰を折るとの批判が国外から出ている。秋季予測はこれに対し、「グローバル規模のショックには財政的に安定した国家しか適切に対処できないことは、経済・金融危機ではっきりした」と指摘。ドイツの累積財政赤字の対GDP比率が高まれば将来の危機に対処できる余地が狭まるとして、財政再建の先送りは誤りだと反論した。ドイツの同比率は08年の66%から今年は75%へと膨らみ、ユーロ加盟国に課される60%の上限枠を一段と上回る見通しだ。

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世界経済に関してはすでに減速が始まっており、特に米国に関しては景気の二番底に陥る可能性もあるとの見方を示した。家計の赤字や不動産市場の低迷、失業率の高止まり、消費低迷をマイナス要因に挙げている。

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EUに関しては◇景気対策で財政赤字が膨らんだ加盟国が財政再建に乗り出す◇デフォルトリスクに陥ったユーロ加盟国が先ごろ導入された最大7,500億ユーロの緊急支援制度(欧州金融安定化メカニズム)を利用する可能性がある―などをドイツ経済の懸念材料とみている。秋季予測はこのほか、中国で不動産バブルが崩壊するリスクにも警鐘を鳴らした。

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