年金支給開始年齢に達した従業員との雇用関係を自動的に解消することを認めたドイツの国内法および労使協定は欧州連合(EU)法違反の恐れがあるとして、ハンブルク労働裁判所が欧州司法裁判所の先行判決を仰いでいた係争で、欧州司法裁は12日、定年退職制度はEU法に合致しているとの判決(訴訟番号:C-45/09)を下した。判決理由で裁判官は、定年制度は政治、経済、社会、人口転換、財政などさまざまな要因を総合的に考慮して導入されたルールで、高齢者差別には当たらないと言明。またEUの他の加盟国でも長年にわたって広く採用されていることを指摘した。
\裁判を起こしたのはハンブルクにある兵舎の掃除婦として39年間勤務してきた女性。パート勤務で年金が月228ユーロと少なく生活が苦しくなることもあり、定年退職制度は高齢者差別に当たるとして裁判を起こした。
\ドイツでは一般平等待遇法(AGG)のほか、多くの労使協定で定年退職が定められており、雇用主が原告との雇用関係を解消したことに国内法上の問題はない。だが、ハンブルク労裁の裁判官はドイツのルール・慣習が雇用関係における差別を禁止したEU基本条約およびEU指令2000/78に違反している可能性があると判断。欧州司法裁の判断を仰いだ。
\欧州司法裁の裁判官は判決文のなかで、定年制度は職業生活からの引退を強制するものでなく、あくくまでも雇用関係の終了を意味するに過ぎないと指摘。被用者は定年退職した後でも求人に応募して職業生活を継続できることを強調した。
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