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2010/11/3

経済産業情報

グラム陰性菌でパラジウムのナノ粒子調製に成功

この記事の要約

グラム陰性菌を利用してパラジウム(Pd)水溶液からPdの微粒子を析出させることに、ギーセン大学とオーフス大学(デンマーク)の研究チームが成功した。従来の手法では金属の分離・濃縮から高機能材料化(ナノ粒子調製)まで多段階の […]

グラム陰性菌を利用してパラジウム(Pd)水溶液からPdの微粒子を析出させることに、ギーセン大学とオーフス大学(デンマーク)の研究チームが成功した。従来の手法では金属の分離・濃縮から高機能材料化(ナノ粒子調製)まで多段階のプロセスが必要だったが、微生物を利用することでこれらの手間を一気に省けるようにした。チームは研究をさらに進展させる意向だ。

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生物が鉱物を作りだす作用は「バイオミネラリゼーション」と呼ばれる。身近なところではサンゴ礁や真珠、甲殻類の外骨格がこの作用で生成される。

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微生物を利用して溶液から金属イオンを回収・還元し、ナノ粒子を調製する技術は、環境にやさしい産業廃棄物リサイクルなどの観点から近年、急速に関心を集めている。なかでもPdは、触媒反応の種類が多様なことから、産業利用への応用に大きな期待がかかっている。

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Pdに対しては、硫酸還元細菌や鉄還元細菌(いずれもグラム陰性菌)などでバイオミネラリゼーションが可能なことがすでに確認されている。ギーセン大学とオーフス大学の研究チームは今回、グラム陰性菌の中でも金属をエネルギー源として取り込むという報告がこれまでに知られていない3種類(Cupriavidus necator、Pseudomonas putida、Paracoccus denitrificans)を使用し、菌を添加した溶液と添加しない溶液で析出されたPdの大きさや分子構造を比較した。この結果、菌を添加した溶液では粒子径3~30ナノメートルの微粒子が回収できた一方、菌が添加されていない水溶液では最密構造で大粒の集合体しか得られなかった。

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Pdが蓄積されたのは、細胞質膜と外膜に挟まれた「ペリプラズム空間」であることが確認された。ペリプラズム空間には栄養分を細胞内に取り込む分解酵素や結合タンパクが存在することから、酵素がPdの捕集に関与している可能性が考えられたが、酵素が不活性のCupriavidus necatorでもナノ粒子が析出されたことから、酵素は関与していないようだという。

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研究の結果は『Biotechnology and Bioengineering』に掲載された。

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