遺伝子技術規制法(GenTG)に定められた遺伝子組み換え(GM)作物の栽培規定は職業の自由や所有権、自己情報管理権など憲法(基本法)で保証された基本的人権を侵害しているとして独東部のザクセン・アンハルト州が違憲立法審査を求めていた裁判で、連邦憲法裁判所(BVerfG)は11月24日、訴えを棄却する判決を下した。判決理由で裁判官は、「将来の世代のために自然的な生存基盤と動物を保護する」ことを国家に義務づけた基本法20条aの規定を指摘。GM作物の栽培に厳しい規制を適用することは公共の福祉に合致するとの判断を示した。
\GenTGの現行法は社会民主党(SPD)と緑の党からなる中道左派のシュレーダー政権(当時)が成立させた法律で、2005年に施行された。GM汚染を防ぐために、(1)GM作物の栽培規則(2)GM作物の栽培で周辺農地の作物が汚染された場合、GM農家と種子メーカーがその賠償責任を負う(3)GM作物の栽培農家に詳細情報の届出を義務づけ、周辺の農家や一般市民がその事実を十分に知ることができるようにする――などが盛り込まれており、賠償請求を恐れて農家がGM作物の栽培に踏み切れないなどの批判が法案作成当時からあった。
\ザクセン・アンハルト州はこれらの規定が農業事業者の人権を侵害していると訴えたが、裁判官はGM作物が自然界に野放図に流出するとその拡大を食い止めることは事実上、不可能だと指摘。また、GM作物が自然環境にもたらす長期的な影響は科学的に解明されていないとして、厳しい規制は妥当だと言い渡した。
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