計画実施が大幅に遅れているエルベ川浚渫(しゅんせつ)事業に対し、国外の海運会社が苛立ちを強めている。中国の国営海運会社Coscoの魏家福(Wei Jiafu)最高経営責任者(CEO)は11月26日開催された中国・欧州フォーラム(ハンブルクサミット)で、「我々の貨物船は大型化している。ハンブルク港が現状にとどまることは許されない」と発言。このままでは入港先をロッテルダムに変更せざるを得なくなるとしてドイツ側に圧力をかけた。11月29日付『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。
\エルベ川は19世紀からこれまでに計8回の浚渫工事が行われており、水深は3.5メートルから15メートルへと拡大した。現行の浚渫計画は10年前に立ちあげられたが、工事に必要な認可がすべて下りていないほか、前回の浚渫工事で壊滅的な被害を受けた漁業者や住民が強く反対しているため、足踏み状態が続いている。
\関係者はこれまで、浚渫工事に取りかかれるのは早くても2011年末との見通しを示してきた。浚渫事業を推進していたキリスト教民主同盟(CDU)と緑の党からなるハンブルク州連立政権がこのほど解消されたため、プロジェクトの先行きは不透明さを増している。
\仏海運大手CMA CGM独法人のペッシェル社長は地元紙『Hamburger Abendblatt』に対し、「浚渫プロジェクトがさらに遅延すれば、大型貨物船はハンブルクに背を向けざるを得なくなる」と述べて危機感を表明した。
\Coscoはロッテルダムやアントワープ港のターミナルに出資するなど、ハンブルク以外にも足場を固める一方、「主軸はあくまでハンブルク」との立場だ。現在はハンブルク港湾管理会社(HPA)が計画する新ターミナルへの出資や中国大手銀行による船舶融資への道を探るなど、影響力の強化に向けた布石を打っている。
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