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2010/12/8

経済産業情報

CO2分離でパイロット施設稼働、低コストと循環利用が特徴

この記事の要約

火力発電所から排出される二酸化炭素(CO2)を低コスト・省エネルギーで分離・回収する2つの新技術を投入したパイロット施設が11月からダルムシュタットで稼働を開始した。1つは石灰を利用したCO2分離、もう1つは酸化金属から […]

火力発電所から排出される二酸化炭素(CO2)を低コスト・省エネルギーで分離・回収する2つの新技術を投入したパイロット施設が11月からダルムシュタットで稼働を開始した。1つは石灰を利用したCO2分離、もう1つは酸化金属から酸素をとりだして燃焼させる酸素燃焼法で、いずれも酸化還元反応を利用するため、循環利用できるのが特徴だ。

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パイロット施設で導入された1つめの技術「Carbonate Looping(CL)」は、第1反応炉で生石灰(CaO)に排煙中のCO2を吸収させて炭酸カルシウム(CaCO3)を生成。これを950度の第2反応炉で焼成して純粋なCO2とCaOに分離する。分離後のCO2は貯蔵施設に送られ、CaOは第1反応炉に戻されて再利用される。石灰をCO2吸収体に利用するメリットとしては、ありふれた元素で調達コストが安いほか、吸収体として現在主流のアミン溶液と異なり毒性がないため廃棄処理が簡単なことがある。

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2つめの技術「Chemical Looping Combustion(CLC)」は、空気の代わりに酸素を用いて石炭を燃焼させる「酸素燃焼(オキシフューエル)法」の新たな手法として開発された。酸素で燃焼させると不純物を含まずCO2の分離がしやすい排ガスを生成させることができる。CLCでは1,050度の第1反応炉(空気反応炉)で空気と金属を反応させて酸化金属(MxOy)を生成し、これを水蒸気(H2O)、燃料とともに第2反応炉(燃料反応炉)に送り、950度で無煙燃焼させる。酸化金属の酸素を燃焼に利用することで空気中の窒素が反応炉に混入するのを防げるため、燃焼によって生じた排ガスには高濃度のCO2と水蒸気しか含まれず、CO2を容易に分離・回収できる。一方、燃焼反応で酸素を奪われた(還元した)酸化金属(MxOy-1)は再び反応プロセスに戻される。

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今回のパイロット施設は、ダルムシュタット大学が関与する2つの産学プロジェクトを合わせたものだ。石灰を利用したCO2分離プロジェクト「LISA」はアルストム、RWE、Hitachi Power Europeなどが参加。酸素燃焼化学循環プロジェクト「Éclair」にはバッテンフォール、エアリキード、CSICなどが取り組んでいる。

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