ドイツ語能力の低い外国人労働者の解雇を妥当とする判決を最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が下したことについては、以前このコラムで紹介した(2010年2月3日号)。裁判官はその理由の1つとして、解雇された被用者に対し雇用主がドイツ語取得の機会を十分に与えてきたにも関わらず、被用者が本気で習得しようとしなかったことを挙げていた。
\では、能力の低い被用者に対し仕事上必要な技能を習得させるよう努力することは雇用主の義務なのであろうか。シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が昨年9月に下した判決(訴訟番号:3 Sa 153/09)ではそのような義務はないとの判断が示されている。今回はこの裁判をお伝えする。
\裁判を起こしたのは被用者3人の自動車修理工場に1969年から勤務していた55歳の社員。自動車修理工としての職業教育を受けていないうえ、読み書き能力が弱いため、パソコンや検査機器を操作できなかった。また、自動車の運転免許を持っていないため、テストドライブもできなかった。
\被告の雇用主は経営状態が悪化し人員削減が避けられなくなったことを受け、原告を2009年6月末日付で整理解雇した。他の従業員は自動車修理工の資格を持ち業務を適切にこなしており、解雇対象とするのは原告社員以外、あり得なかったためだ。
\これに対し原告は解雇は不当と主張。被告には配慮義務に従い技術進歩に見合った職業研修を原告に受けさせる義務があった、あるいは少なくとも技術の習得を適切な時期に要求する義務があったとして、解雇の取り消しを求めた。
\第1審のリューベック労働裁判所は原告の訴えを棄却。第2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁も原告敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、業務に必要な能力や資格は被用者が自らの責任で獲得しなければならないと指摘。そのうえで、原告には少なくとも能力や取得の獲得に必要な措置を雇用主に要請する義務があったが、そうしたことを一切行わなかったとして、解雇は妥当だとの判断を示した。
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