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2010/12/22

経済産業情報

植物の免疫システム、硫黄の役割を解明

この記事の要約

硫黄が植物の病害耐性で果たすメカニズムの解明にグラーツ大学などの国際研究チームが成功した。植物の葉にウイルスを接種したところ、根から取り込まれる硫黄の量が増えるとともに、抗酸化・解毒作用のあるグルタチオン(硫黄を含むペプ […]

硫黄が植物の病害耐性で果たすメカニズムの解明にグラーツ大学などの国際研究チームが成功した。植物の葉にウイルスを接種したところ、根から取り込まれる硫黄の量が増えるとともに、抗酸化・解毒作用のあるグルタチオン(硫黄を含むペプチドの一種)の合成が加速したことを確認。一方、ウイルスの増殖が抑えきれなくなると硫黄の吸収量が減少し、葉に含まれる硫黄の量も減ったという。

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硫黄(S)は植物の生育に必要な元素の1つで、硫黄の少ない土壌では植物の育ちが悪く、ウイルスや菌の被害に遭いやすいことが知られている。

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硫黄は硫酸イオンの形で根から吸収され、SO3(三酸化硫黄)、SO2(二酸化硫黄)を経て硫化水素に還元されたのち、含硫アミノ酸であるシステインの原料となる。システインはグルタミン酸、グリシンと結合してグルタチオンに合成される(グルタチオン代謝)。

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グラーツ大学とハンガリー科学アカデミー(HAS)の研究チームは、タバコの葉にタバコモザイクウイルス(TMV)を接種し、硫黄を含む土壌と全く含まない土壌で栽培した。接種から7日後の比較では、硫黄を含まない土壌で葉の3割に感染症状が発生。一方、硫黄を含む土地では全く症状がなかった。14日後でも硫黄を含む土壌のほうが病気の進行が遅かったが、21日後には差がなくなった。

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硫黄を含む土壌で育てた株で遺伝子レベルの変化を調べたところ、ウイルス接種後の数日間、耐性マーカーであるPR1a遺伝子の発現レベルが上昇するとともに、根からの硫黄取り込み量が急増した。さらに、グルタチオン合成に関わるGSH1、GSH2両遺伝子の発現レベルも上昇したことを確認した。

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同研究の成果は『Molecular Plant-Microbe Interactions』(第23巻第11号)に掲載された。

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