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2011/1/5

総合 - ドイツ経済ニュース

2011年は内需主導の景気回復に、ベア3%以上が労組の目標

この記事の要約

ドイツ経済が好調だ。12月のIfo企業景況感指数は東西ドイツ統一後の最高を記録。これまで低調だった小売業で大幅に改善したのが最も目を引くところで、景気回復の波が輸出から企業投資を経て個人消費にも広がってきたことがうかがわ […]

ドイツ経済が好調だ。12月のIfo企業景況感指数は東西ドイツ統一後の最高を記録。これまで低調だった小売業で大幅に改善したのが最も目を引くところで、景気回復の波が輸出から企業投資を経て個人消費にも広がってきたことがうかがわれる。今年は外需の減速が予想されるものの、内需主導で経済の拡大が続くとみられている。

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2010年は外需がけん引車となり第2四半期には国内総生産(GDP)が前期比で実質2.3%増加した。この事実が発表された夏ごろからエコノミストや消費者の間には景気の先行きへの楽観的な見方が急速に広がり、現在に至っている。

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2011年はGDP成長率が2010年の3.5%前後(見通し)から鈍るものの、経済研究所や経済団体は1.7~2.4%と比較的高い水準を見込んでいる。

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Ifo経済研究所によると、今年のGDP成長の9割は内需が担う見通し。個人消費と企業投資が内需の押し上げ要因となる。

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個人消費の先行きが明るいのは、労働市場の回復が続き雇用不安が弱まっていることを受け、消費者の財布のひもがゆるくなっているためだ。2010年のクリスマス商戦(11~12月)ではそうして傾向がすでにあらわれており、独小売業中央連盟(HDE)によると、同期の小売業界の売上高は前年実績を2%程度上回ったという。

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景気と雇用の回復を背景に賃金上昇圧力が高まっていることもプラスに働く。可処分所得の増加につながるためで、市場調査大手のGfKは消費者1人当たりの同所得が今年は前年を499ユーロ上回る1万9,684ユーロへと拡大するとみている。

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経済危機からの回復が鮮明になった昨年9月に行われた鉄鋼業界の労使交渉ではベア3.6%で合意が成立しており、今後他の業界で行われる労使交渉の指標と目されている。12月31日付『南ドイツ新聞』によると、労組関係者は3%以上のベア実現を目指しているもようだ。化学労組IG BCEは今年2月に始まる労使交渉で6~7%の賃上げを要求する方針を固めた。好景気に沸く自動車・電機業界ではボッシュ、シーメンス、ポルシェ、コンチネンタルなどの大手企業が4月に予定していた2.7%の賃上げを2カ月前の2月に前倒しする。

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企業投資が加速するのは設備稼働率が経済危機前の水準まで回復する企業が増えているため。生産設備の更新や拡大を再これまで見合わせてきたこともあり、潜在的な投資需要は大きい。銀行融資を低い金利で受けられることは追い風となる。

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企業の買収活動は活発に

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事業の拡大に向けたM&Aが増えるのも今年の特徴と予想されている。その傾向はすでに2010年の終わりごろから出ており、12月にはGothaer(保険)、Patrizia(不動産)、ランクセス(化学)、Gea(機械)、ドイツ取引所などの大手が買収計画を発表した。

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ドイツ企業が他社買収に積極的になってきた背景には事業の集中選別を進めているほか、これまでのコスト削減措置を通して財務基盤が強まっていることがある。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が投資銀行家などへの取材をもとに報じたところによると、DAX(ドイツ株価指数)30社の手持ち資金は計200億ユーロを超えるもようだ。中小企業の財務力も近年大きく高まっており、自己資本比率が30%を超える優良企業の割合は02年の16.6%から昨年は27.1%へと増加した。

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経済回復をけん引してきた外需の伸びが今年鈍化するのは、内需拡大に伴い輸入が大きく増加するとみられるためだ。ただ、輸出の拡大基調は今年も続く見通しで、独卸売・貿易業者連盟(BGA)は7%増加して初めて1兆ユーロの大台に乗ると予想している。

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景気のリスク要因としてはユーロ危機、中国の金利引き上げと不動産バブル、米国の不動産市場の悪化、原料・燃料高とユーロ安に伴う物価の高騰などが挙げられている。物価の高騰は社会保険の料率引き上げとともに可処分所得を目減りさせるため、賃上げ幅が小さいと消費の勢いが鈍る懸念もある。

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