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2011/1/12

総合 - ドイツ経済ニュース

ダイオキシン汚染、許容値の73倍に 独政府とEUは対策検討へ

この記事の要約

今月3日に表面化した飼料の汚染事件が新たな局面を迎えている。問題を引き起こした企業の飼料原料から許容値の73倍に上るダイオキシンが検出されたほか、欧州連合(EU)の他の加盟国にも汚染の疑いのある卵が出荷されていたことが発 […]

今月3日に表面化した飼料の汚染事件が新たな局面を迎えている。問題を引き起こした企業の飼料原料から許容値の73倍に上るダイオキシンが検出されたほか、欧州連合(EU)の他の加盟国にも汚染の疑いのある卵が出荷されていたことが発覚。飼料の安全性チェック体制に不備があることも明るみになっており、ドイツ政府と欧州委員会は安全性確保に向けて抜本的な対策の検討を開始した。

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汚染されていたのは北ドイツの飼料原料会社Harles & Jentzschがバイオディーゼル燃料メーカーのPetrotecから購入した脂肪酸。Petrotecは燃料生産の副産物である脂肪酸の販売に際し契約書などに用途が工業利用に限られることを明記しており、Harles & Jentzschがこれを飼料向けに流用したことは飼料法違反の疑いがある。

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Harles & Jentzschは当初、12月下旬の品質チェックの際に許容値を上回るダイオキシンが検出されたため当局に通報したとしていた。だが、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州農務省のその後の調査で、少なくとも3月の時点で許容値オーバーの事実をつかんでいたことが明らかになっている。検察当局はすでに捜査を開始し、5日には同社の家宅捜査を行った。

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ダイオキシンの許容上限値は脂肪酸1キログラム当たり0.75ナノグラムと定められている。これに対しHarles & Jentzschの脂肪酸からはその73倍に当たる最大54.67グラムが検出された。

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同社は汚染された脂肪酸を国内の飼料メーカー25社に3,000トン供給。飼料メーカーはこれを完成品へと加工し全国の農家に販売した。

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これらの農家が出荷した鶏卵、鶏肉、豚肉からはすでにダイオキシンが検出されており、当局は回収を指示した。また、汚染飼料を購入した農家に対し販売禁止を命令した。販売を禁止された農家は6日には全国で約4,700カ所に上った。その後、安全性が確認され農家は販売を解禁されており、現在も禁止措置を受けているところは少ない。

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ドイツ農業家連盟(DBV)によると、販売禁止に伴う農家の被害額は1週間当たり4,000万~6,000万ユーロで、1軒平均2万~3万ユーロに上るもようだ。DBVは汚染者負担原則(PPP)に基づいて飼料メーカーと脂肪酸を供給したHarles & Jentzschに損害賠償を請求する方針を示している。ただ、これらメーカーの損害賠償義務保険を引き受ける保険会社は保険金支払いに否定的な立場を示しており、農家が損害賠償を受けられるかは微妙だ。国も損害賠償の肩代わりを拒否している。

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韓中はドイツ産豚肉の輸入禁止

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ダイオキシンに汚染された疑いのある卵はオランダにも輸出され、マヨネーズや焼き菓子などに使用された後、それらの食品が英国に輸出されていた。英国のスーパーではすでにドイツ産鶏卵の販売を取りやめている。また、韓国と中国はドイツ産豚肉の輸入を禁止、ロシアも検疫体制を強化した。

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脂肪酸にダイオキシンが混入した原因は解明されていない。バイオディーゼル燃料の生産ではダイオキシンが発生しないため、当局は他に可能性があるとみて調査している。一方、消費者保護団体フードウオッチは10日、問題の飼料を検査した結果、農薬の残留成分が検出されたとの声明を発表した。

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ドイツのイルゼ・アイグナー連邦農相は同日、食品・飼料業界、農業団体、消費者保護団体の代表と会談。その後の記者会見で安全性対策の強化方針を打ち出した。具体的には◇工業用脂肪酸と食品・飼料用脂肪酸の生産施設の分離を義務化する◇飼料生産に携わる事業者の免許基準を厳格化する◇メーカーの品質チェックとその文書化義務を強化する◇罰則を強化する◇飼料原料に使ってよい物質のリストを作成する(これまで業界の自主協定にまかせてきた)――意向を示している。今後は欧州委と協議し、EU全体の規制体制を構築する意向だ。

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欧州委はこれまで牛肉に限られていた出生地や飼育地、屠殺施設などの情報表記義務をすべての食肉に拡大することを検討している。牛肉の表記義務は狂牛病が大きな問題となった2000年に導入された。

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