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2011/1/12

経済産業情報

二酸化炭素と水から合成ガス生産、太陽熱エネルギー利用で

この記事の要約

太陽エネルギーを利用して二酸化炭素(CO2)と水(H2O)から合成ガス(一酸化炭素(CO)と水素(H2)の混合ガス)を生産する技術を、チューリヒ工科大学(ETH)を中心とする国際研究チームが開発した。太陽エネルギーの新た […]

太陽エネルギーを利用して二酸化炭素(CO2)と水(H2O)から合成ガス(一酸化炭素(CO)と水素(H2)の混合ガス)を生産する技術を、チューリヒ工科大学(ETH)を中心とする国際研究チームが開発した。太陽エネルギーの新たな貯蔵手段としてのほか、CO2の固定化、資源化という点からも注目を集めそうだ。

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植物の光合成メカニズムを模倣して、太陽エネルギーを用いて水を酸素と水素に分解したり、水と二酸化炭素から有機物を合成する人工光合成は、化石燃料に代わるエネルギー供給と地球温暖化問題の解決策として注目を集めている。ただ、太陽光には◇天候に左右される◇多量のエネルギーが消費される場所(工業国)と日照時間が長い場所(中緯度の乾燥地帯)が必ずしも一致しない――といった難点がある。ETH、パウル・シェラー研究所(PSI)、米カリフォルニア工科大学(Caltech)の国際研究チームはこうした事情を踏まえ、太陽エネルギーを安定して貯蔵でき、かつ長距離輸送が簡単な物質を合成するシステムの開発に取り組んだ。

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チームが今回開発した技術では、(1)太陽光を集光して得られる高温太陽熱を用いて酸化セリウム(CeO2)を還元性ガス中で1,500度に加熱し、酸素欠陥(CeO2-x+x/2O2)を生成させる(2)酸素欠損の酸化セリウムを900度でH2OとCO2に反応させると、酸化セリウムがH2OとCO2から酸素原子(O)を奪ってもとのCeO2に戻るとともに、H2とCO(合成ガス)が生成される――という2段階のステップを踏む。エネルギー変換効率(照射した光と生成物の熱量比)は0.8%で、CO2還元型(CO2を別の物質に変換する)人工光合成としては「従来の数百倍」の効率に改善できたという。

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研究の結果は『Nature』誌に掲載された。

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